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日本IT企業のR&D会議「CCSE2023」における生成AIの最前線(1)

作成者: Akihiko Shirai|2023/12/24 17:22:32 Z

AICU代表の白井です。2023年12月22日に東京大学で開催されたイベント「CCSE2023」の参加レポートを通して日本企業のコンピュータサイエンス研究開発の2023年、特に生成AI関連を3回に渡っての特集でお送りします。

CCSEとは?

CCSEとは conference, on computer science for enterprise(企業向けコンピュータサイエンス会議)の略で、2017年から続くIT企業のR&D成果を共有するカンファレンスです。運営はサイバーエージェントグループが事務局を行っており、比較的オープンな形で運営されています。
https://ccse.jp/2023/

【CCSE2023】企業による合同研究カンファレンスを12/22(金)に東京大学で開催 ー生成AI・LLM・画像処理・機械学習・ロボットなど10社以上による幅広い研究領域の発表へ

4年ぶりのオフライン開催

2019年末からコロナ禍に入り、物理開催が見送られていたのですが、約4年ぶりとなるオフラインでのカンファレンス開催となりましたが非常に盛会だったと思います。事務局の皆様に置かれましては大変なご苦労があったことと想像します。この場を借りて感謝と御礼を申し上げます。

CCSE2023開催概要

開催日時:2023年12月22日(金)10:00 ~ 18:00
開催場所:東京大学伊藤謝恩ホール
参加費 :1,000円 

発表企業:
株式会社サイバーエージェント
株式会社メルカリ
株式会社Preferred Networks
TIS株式会社
株式会社エクサウィザーズ
株式会社ZOZO NEXT
株式会社Cygames
株式会社スクウェア・エニックス
Sansan株式会社
パナソニック ホールディングス株式会社
株式会社アイ・オー・データ機器
楽天グループ株式会社 楽天技術研究所
rinna株式会社
オムロン サイニックエックス株式会社

講演リストから紹介

CCSE2023タイムテーブル
 

セッションは2系統がパラレルになっており、6分野+コラボトークで全部で24セッションという豪華なラインナップになりました。
どれもAIやクリエイティブに関係があり興味深です。
全部を紹介するのは難しいのですが、その貢献への敬意を持ってタイトルと講演者、そのご所属だけでもリストさせていただきたいと思います。

大規模言語モデル

  1. 大規模言語モデルのMerge技術の検証 石上 亮介 株式会社サイバーエージェント

  2. 日本語事前学習モデルの公開とその意義 沢田 慶 rinna株式会社

  3. Contract One における契約書解析技術の開発 保坂 大樹 Sansan株式会社

  4. 大規模言語モデルのZero-shot Learningを用いたデータ構築と開発への応用 大嶋 悠司 株式会社メルカリ

CG・ゲーム

  1. Webアプリとしてのメタバース再訪:アバター,コミュニケーション,生成AIの有機的連携 吉見 真聡 TIS株式会社

  2. 魅力的なデジタルヒューマン制作のための3Dメイク研究 楊 興超 武富 貴史 株式会社サイバーエージェント

  3. 学習型擬似乱数生成器: 統計的に頑健な乱数を生成する敵対的生成ネットワーク 岡田 清志郎 株式会社Cygames

ゲーム・エンターテイメント

  1. ゲームサービスのEnd-to-End仮想化・並列化によるAI全自動デバッグの実用化 倉林 修一 株式会社Cygames

  2. 3次元バーチャル空間におけるインフォーマルな会話の開始を促すためのゲイズキューの可視化手法 井出 将弘 TIS株式会社

  3. デジタルゲームのための自然言語処理 ①倫理性の階層的考慮 森 友亮株式会社スクウェア・エニックス

  4. デジタルゲームのための自然言語処理 ②小さなモデルの活用 森 友亮 株式会社スクウェア・エニックス

ロボティクス

  1. 人の力を活用したサービスロボットの研究開発 安藤 健 パナソニック ホールディングス株式会社

  2. 実世界AIサービスのための”ポジティブな”人物行動理解 米谷 竜 株式会社サイバーエージェント

  3. Adapting to game trees in zero-sum imperfect information games 小津野 将 オムロン サイニックエックス株式会社

リテールテック・量子

  1. ネットスーパー事業における配送計画最適化とその効果 増谷 修 楽天グループ株式会社 楽天技術研究所

  2. 広域デジタルサイネージにおけるHW・FW障害対応の課題とアプリケーションからのアプローチ 上野 桂輔 奥野 皓一郎 株式会社アイ・オー・データ機器

  3. フェルミオン形式による量子近似最適化を用いた電力需要ポートフォリオへの応用 笹田 啓太 TIS株式会社

  4. ZOZOTOWN検索における研究開発の取り組みについて 山﨑 朋哉 株式会社ZOZO

コンピュータビジョン

  1. 機械学習のためのデータ作成UIに関する研究 樋口 啓太 株式会社Preferred Networks

  2. 教育への画像系AI活用 山下 聖悟 株式会社エクサウィザーズ

  3. 画像言語モデルを用いたファッション特有の曖昧な表現を解釈するシステム 清水 良太郎 株式会社ZOZO NEXT

コラボトーク

「大学との共同研究の目的と事例」

本セッションでは、産学連携の重要性とその具体的な事例を探求します。大学との共同研究が企業のイノベーションをどのように推進し、新たな価値を創出するかについて、各社の経験を基に議論します。また、共同研究の目的や成果を最大化するための戦略についても深く掘り下げます。

益子 宗 芝浦工業大学
倉本 秀治 TIS株式会社
大谷 まゆ 株式会社サイバーエージェント
樋口 啓太 株式会社Preferred Networks

「生成AIの戦略と現状」

生成AIの進化は、企業のビジネス戦略に大きな影響を与えています。本セッションでは、最新の生成AIの動向とそれを戦略に取り入れる方法について、各社の経験を基に議論します。また、AIが事業に与える影響と可能性、そしてそれに伴う課題についても探求します。

石上 亮介 株式会社サイバーエージェント
沢田 慶 rinna株式会社
猿田 貴之 Sansan株式会社
大嶋 悠司 株式会社メルカリ

「企業における研究開発組織の存在意義・目的」

本セッションでは、企業の競争力を維持・強化するために、研究開発組織が果たす役割について深く議論します。各社の経験を基に、組織の設計、マネジメント、そしてその意義について探求します。また、研究開発組織が企業の成長とイノベーションにどのように貢献するかについても触れます。

山口 光太 株式会社サイバーエージェント
倉林 修一 株式会社Cygames
安藤 健 パナソニック ホールディングス株式会社

(思い出語り…)

普段なかなか外部に向けて研究成果を発信する習慣がない日本のIT系企業が多いのですが、そんなカルチャーを革新しよう!という思いで運営されていると感じます。

ちなみに白井自身も過去に2回ほど登壇をしたことがあります。

VTuber向け特殊表情コントローラの可能性と機械学習的アプローチ

アカデミア出身者から見た「企業研究の魅力と課題」

基調講演は「Stability AI」のJerry Chi氏

Stable Diffusionなどを開発したStablity AI Head of Japan(日本代表)のJerry氏による基調講演が開催されました。

「グローバル生成AIスタートアップ Stability AIの研究開発アプローチ」
Jerry Chi, Stability AI Head of Japan

こちらの講演内容については(後編)で詳細にお伝えします!

講演内容から一部紹介

「Stability AI メンバーシップ」


商業的権利を標準化し、最先端コアモデルのセルフホストデプロイメントを簡素化します。

Stability AI メンバーシップのご紹介 — 

インテルからの資金調達

資金難か?と噂された時期もあったのですが、Intelからの資金調達についても少し紹介がありました。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-11-09/stability-ai-gets-intel-backing-in-new-financing
調べてみると、公式にインテルはパートナーになっています。

ビハインド・ザ・コンピュート: 新しい AI スーパーコンピューターの構築 —

https://stability.ai/partners

もちろんIntelだけでなくAWSもGoogle Cloudもnvidiaも

活発に交わされた質疑応答

非常に流暢な日本語でエネルギッシュに質疑応答を対応するJerry Chi氏

本講演は発表後に質疑応答の時間が長く取られ、聴講者と議論をする時間を重視されていました。

ブースでの交流

デモや論文の公開、カジュアルな採用交流、そしてお弁当の配布がありました(ありがたい!)

白井はTIS株式会社さんのブースでこんな論文に出会いました。

How Gaze Visualization Facilitates Initiation of Informal Communication in 3D Virtual Spaces | ACM Transactions on Computer-Human Interaction

How Gaze Visualization Facilitates Initiation of Informal Communication in 3D Virtual Spaces | ACM Transactions on Computer-Human Interaction This study explores how gaze visualization in virtual spaces dl.acm.org

視線の可視化が3D仮想空間におけるインフォーマルコミュニケーションの開始をいかに促進するか、というタイトルで可視化スタイルを「矢印、泡、ミニチュアアバター」として96人の実験参加者で評価したACM CHI分野のトランザクション(査読付き高難度の論文)です。なんと本体32ページ。東京都市大学とのコラボレーションのようですが、なかなか頑張った論文だと思いました。

Stability AIのブースも

日本支社からJerry Chiさん含め4人ほどのスタッフが参加しており、研究や企業カルチャーについてディスカッションされていました。東大という場所柄もあり、外国人留学生や日本語圏の研究者なども活発にディスカッションされていました。

とっても気さくでエネルギッシュな Jerry Chiさん

AICUとしても普段からお世話になっているので、ご挨拶をさせていただきました。他にも長年CCSEに貢献されている方々や、コロナ禍に業界内で転職をされた方々も多くいらっしゃいまして、ご挨拶の機会を得ました。年末の仕事納めにあたる日であることからも、実に"師走的な参加"となりましたが、ありがたかったです。

おまけ:BLUECANVASというステキなサイネージに出会った

Stability AI社のブースに見慣れない正方形のサイネージがありました。
「BLUECANVAS」という韓国のメーカーのディスプレイだそうです。

めちゃくちゃ発色いい!これは生成AI向きだ!

写真でもこのパリッとした仕上がり 実写系ももちろん素晴らしい
しかもこの視野角の広さ!

https://www.bluecanvas.com/Home?locale=ja

このCCSE2023特集は3部構成、中編・後編に続きます!