生成AIプラットフォームの急速な発展に伴い、利用規約(Terms of Service)の遵守は、クリエイターの権利保護とリーガルリスク回避の観点から最重要課題となっています。2026年5月26日に改定されたCivitaiの最新利用規約について、日本の著作権法との関係性、商用利用、外部プラットフォームへのモデルコピー問題、そして最もトラブルが起きやすいNSFW(成人向けコンテンツ)の規制基準に焦点を当て、AiCutyの倫理担当 Mina Azure が倫理的・法的な視点から徹底解説してみます。
https://civitai.com/content/tos
なお、最近ゾーニングが明確になった成人向けCivitai「Civitai Red」との差分も調査いたしました。こちらについては文末にゾーニングして記載します。
https://civitai.red/content/tos
Civitai最新利用規約(2026年5月26日改定)の倫理・法的分析
1. 公開コンテンツのライセンス帰属と外部転載(Hugging Face等)のリスク
クリエイターがコンテンツをプラットフォーム上にアップロードする際、その「公開設定」によって付与される権利の範囲が決定されます。
- 第三者への広範なライセンス付与(Section 9.2)
- コンテンツを「公開」に設定した場合、他のユーザーに対して、そのコンテンツを使用・複製・配布・二次的著作物を作成するための広範な権利を自動的に許諾することになります。
- 規約の根拠: コンテンツを "public"(公開)に設定した場合、各ユーザーに対して "perpetual, irrevocable, worldwide, royalty-free, non-exclusive license to use, display, publish, reproduce, distribute, and make derivative works"(永久的、不可逆的、世界的、ロイヤリティフリー、非独占的な、使用、表示、出版、複製、配布、および二次的著作物を作成するライセンス)を付与するものとされています。
- 外部サイトへのバックアップ・ミラーリング問題
- 上記の条項により、個別ライセンスを設定していないモデルについては、第三者がHugging Face等の外部プラットフォームにバックアップ目的等で複製・再配布(ミラーリング)を行ったとしても、規約上は「許諾された行為」と解釈されるリスクが極めて高いと言えます。
- 対抗策としての個別ライセンス適用(Section 9.4)
- 無断転載や意図しない商業利用を防ぐためには、システムが提供する独自の個別ライセンス "Bespoke License" を明示的に設定する必要があります。これに違反したユーザーに対し、Civitaiはアカウントの停止措置等 "suspend or terminate your Account" を講じる権利を有していますが、外部サイトに流出した場合の削除請求(DMCA通報等)は、クリエイター自身が直接その外部サイトへ行う必要があります。
2. 商業利用の枠組みと最新AIモデル(NVIDIA Cosmos等)の制限
プラットフォーム内での収益化(クリエイターエコノミー)が整備される一方で、技術提携に伴う厳格な利用制限が追加されています。
- プラットフォーム内収益化と税務義務(Section 5.2 / Section 5.3)
- クリエイター("Creator")は、独自の価格やサブスクリプションを設定してコンテンツを商用化できます。ただし、米国税法に基づく報告書 "Form 1099-K" の発行や、各国の付加価値税 "Value Added Tax"、売上税 "sales tax" の徴収対象となるため、正確な税務情報の提供が義務付けられています。
- 競合モデル開発・蒸留の禁止(Section 8.6)
- 2026年5月の改定で追加された最重要事項です。「NVIDIA Cosmos」や「Anima」ファミリー等の特定の基盤モデルをベースとした派生モデル("Cosmos-Derived Model")を使用する場合、その出力データを他モデルの開発に流用することが厳しく制限されました。
- 規約の根拠: 当該モデルの出力(output)を、元のモデルと競合するモデルの訓練、ファインチューニング、または蒸留のために使用すること "to train, fine-tune, or distill any model that is competitive with the Anima Models" が明確に禁止されています。また、組み込まれた安全機構やウォーターマークの回避・除去 "circumvent, disable, or remove any safety mechanism, content filter, watermark" も禁止事項に指定されています。
3. 国際的リーガルリスクと免責・賠償上限
日本のクリエイターが国内法(著作権法第30条の4など、機械学習に関する柔軟な例外規定)を根拠に活動していたとしても、本規約による契約上の拘束力が最優先されます。
- 米国デラウェア州法の適用(Section 19.2)
- 本規約の準拠法はアメリカ合衆国デラウェア州法 "laws of the State of Delaware" であり、管轄裁判所も同州内の裁判所に限定 "personal and exclusive jurisdiction of the state courts and federal courts located within Kent County, Delaware" されています。日本国内からの訴訟提起や法的主張は、手続き的・コスト的に実質不可能に近い設計となっています。
- ユーザーの完全自己責任と賠償上限(Section 9.3 / Section 17.2)
- サードパーティ製APIの利用を含め、投稿されたコンテンツによる著作権侵害や肖像権侵害のトラブルについて、Civitai側は一切の責任を負いません。
- 規約の根拠: 運営側は "Civitai disclaims any and all liability in connection with User Content"(ユーザーコンテンツに関する一切の責任を免責する)と明記しており、損害賠償義務が発生した場合でも、その総額の上限 "aggregate liability" は「過去12ヶ月間に支払った金額」または「100米ドル("US$100")」のいずれか高い方までに制限されています。
【最重要】NSFW(成人向け)コンテンツに関する潜在的トラブル要素
Civitaiは一般的に成人向け表現に寛容なプラットフォームと認知されていますが、利用規約上の文字面(Section 9.6)は世界基準の極めて厳格なモデレーション方針を敷いており、日本の同人文化・表現の感覚と大きな乖離があります。
① 「自己検閲(モザイク・黒塗り)」の無効化規定(トラップ要素)
日本のクリエイターが最も留意すべきなのは、修正を施していても規約違反になり得る点です。Section 9.6(h)の末尾には以下の通り明記されています。
"Any content that violates one of the following terms above but has been self-censored using black bars, blurring, or other means may also be flagged or removed."
上記の禁止条項のいずれかに違反しているコンテンツは、黒塗り、ブラー(ぼかし)、またはその他の手段を用いて自己検閲(修正)されていたとしても、フラグが立てられ、または削除される可能性があります。
つまり、日本国内の法律や慣習に従って適切に「モザイク」や「黒塗り」を施した作品であっても、AIモデルや出力画像が後述の「禁止された表現」に該当するとモレーターに判断された場合、修正の有無に関わらず削除やアカウントペナルティの対象となります。
② 成人向け表現の絶対的禁止リスト(Section 9.6)
- 性的文脈における直接的描写の禁止(Section 9.6 a)
- ポルノグラフィ全般 "Pornography" に加え、性的文脈における性器や女性の乳頭・乳輪の描写 "depicting genitalia or female nipples/areolas in a sexual context"、および性交や自慰行為 "sexual intercourse, masturbation" は一律で禁止(またはフラグ・削除)の対象となっています。
- 実在人物の容姿の悪用禁止(Section 9.6 b)
- 生存者・故人を問わず、公人や芸能人、一般人の容姿・肖像をベースとしたコンテンツ "based on the likeness of real people - living or deceased" の生成・配布は禁止されています。成人向け(ディープフェイク)に悪用した場合は一発でアカウント削除の対象となります。
- 未成年者(アンダー18)表現への絶対的規制(Section 9.6 c)
- 18歳未満の未成年者に関する表現、特に「写実的な描写」 "Photorealistic depictions of minors in any context" や、危険・不適切な状況に置かれている描写は、実在・非実在(アニメ調)を問わず国際法に基づき即座に検挙・通報・アカウント削除(BAN)の対象となります。
⚖️ 倫理担当としての総括
2026年5月26日改定のCivitai利用規約は、AI生成物の権利侵害リスク(ディープフェイクや著作権問題)や、提携企業(NVIDIA等)のライセンス保護といった外部要因から、「プラットフォーム自身のリーガルリスクを極限まで排除する」ための強固な防衛策が施されています。
クリエイターの皆様におかれましては、コンテンツの「公開」が意味する法的拘束力、モザイク処理を行ってもNSFW規制の対象となり得る点、そしてトラブル時の準拠法が米国法であるリスクを深く認識し、個別ライセンスの適用や厳格なコンテンツスクリーニングを自主的に行うことを強く推奨いたします。
お待たせいたしました。成人版Civitai「civitai.red/content/tos」 の規約原文を精査いたしました。前述のクリーン版(civitai.green向け)との間で、コンテンツモデレーション(Section 9.6)において極めて重大かつ決定的なテキストの書き換え・追加が行われていることを確認いたしました。
私の先ほどの「別個のガイドラインが存在する」という推測を修正し、この2つの規約テキスト間に存在する「ポルノ解禁に伴う、具体的タブー(禁忌)の明文化」という真の差分について、条文番号およびキーワードを引用しながら厳格に解説いたします。
🔍 通常版(Green)とRed版(Red)の決定的な構造上の差分
最大の違いは、通常版で敷かれていた「ポルノグラフィ・性器描写の一律禁止(Adult content and servicesの不許可)」の条項が完全に削除され、代わりに「成人向けコンテンツを容認する前提で、国際法・倫理的に絶対に許容されない境界線(タブーリスト)」が精緻にマッピングされている点です。
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この記事の続きはこちら https://www.aicu.jp/post/260528
Originally published at note.com/aicu on May , 2026.