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サム・アルトマンが語るAIの未来: 子育てとAI、GPT-5の登場とAGI登場後の人類

作成者: AICU Japan|2025/06/20 18:46:29 Z

OpenAIがYouTube他でPodcastを開始しました。記念すべき第1回目では、元エンジニアで科学コミュニケーター、アンドリュー・メイン(Andrew Mayne)がサム・アルトマン(Sam Altman)CEOを迎え、AIの未来について語ります。話題はGPT-5の進捗、AGI(汎用人工知能)、Stargate計画、研究ワークフローの刷新、さらにはAIを活用した育児まで多岐にわたります。概要翻訳でお送りします。全文字幕が整備されているのでフルバージョンはこちらの動画をどうぞ。

トピックタイムライン

 
  • 00:00 OpenAI Podcastへようこそ

  • 01:00 ChatGPTと子育て

  • 04:10 AGI、超知能、そして科学の進展

  • 07:10 Operator、Deep Research、生産性の新時代

  • 10:30 GPT-5とモデルの命名問題

  • 13:40 ユーザープライバシーとNYT訴訟

  • 16:15 ChatGPTに広告が表示される未来?

  • 20:30 ソーシャルメディアとユーザー行動

  • 23:25 Stargateプロジェクトと演算資源の重要性

  • 31:30 今後の進化と新しいAIデバイスの可能性

  • 38:45 最後に

 

親として、CEOとして、AIと向き合うということ

OpenAI CEOのサム・アルトマン氏が、初回ゲストとして登場。ホストのアンドリュー・メイン氏との対話は、 父親としての視点から始まりました。

自分の子供が将来AIをどのように活用するかについて多くの時間を費やして考えています。

私の子供たちがAIより賢くなることは決して無いでしょう。

私の子供たちがAIより賢くなることは決して無いでしょう。


と語るアルトマン氏。ChatGPTは、もはや質問の答えを得る道具というより、子どもの発達や教育を見守るAIパートナーとして使われているのだという。

彼の見立てでは、次世代の子どもたちは「AIのほうが賢い」という事実にすら動じないという。むしろ彼らは、AIを自然に使いこなす”ネイティブ世代”となり、我々とは異なる「能力ベースの世界」で育っていくというビジョンを語りました。

今生まれてくる子供たちは、世界には常に非常に賢いAIが存在していたと考えるでしょう。

AGI、超知能、そして科学の進展

Mayne:もし「AGIとは何か?」と5年前に尋ねられたら、ほとんどの人が今のGPT-4oのようなモデルのことを想像していなかったはずです。いま振り返ってみると、AGIの定義そのものがすでに「後ろにずれ続けている」ように思いませんか?

Altman:まったくその通りだと思います。いまのモデルはすでに非常に賢く、多くの人が「これはAGIでは?」と感じ始めている一方で、その定義は毎年のように引き伸ばされています。つまり、我々の知的期待が、モデルの進化速度に押されて常に後方にずれているんです。

Mayne:では、あなたにとって「超知能(superintelligence)」のラインを越えるには、どのような条件が必要ですか?

Altman:いい質問です。私にとって超知能の目安となるのは、次のようなことができるAIです——「新しい科学の自律的発見」を可能にするAIですね。あるいは、人間の科学的能力を飛躍的に高めるようなツールです。それが現れたとき、私は「これはもう明確に超知能だ」と考えるでしょう。そして、それはおそらく世界にとって非常に素晴らしい転換点になると思います。

Mayne:それは、OpenAI内部でも共有されている考えですか?

Altman:内部でも外部でも、私の同僚や元同僚たちは、楽観的な人が多いです。科学の進歩が、人間の生活の質を劇的に改善するという点については、私も大いに信じています。そして、その進歩の中核にAIがある未来は、すでに始まりつつあると思っています。

Operator、Deep Research、生産性の新時代

Mayne:Operatorについてですが、内部で「これがAGIかもしれない」と言う人もいたそうですね。

Altman:そうですね、実際にそういう声は多く聞きました。Operatorは、ただの質問応答を超えて、情報の検索から分析、そして要約までを自動でこなすようになっています。私自身の体験でいえば、マクルーハンに関する資料を集めようとしたとき、膨大な画像や引用を一気に収集できたことに驚きました。人間が数日かけてやる作業を、数分でやってくれました。

Mayne:それは研究者にとって夢のようなワークフローですね。

Altman:まさにその通りです。特に「Deep Research」という機能を使うと、自分の好奇心に応じて新しい知識を掘り下げていくことができます。私は音声ファイルで研究内容を生成するアプリまで作りました。通勤中でも耳で学習できるんです。学びたい意欲が記憶力を上回ってしまう時代に、最適なツールだと思っています。

GPT-5とモデルの命名問題

Mayne:そろそろ誰もが気になっている質問を。GPT-5はいつ出るのでしょうか?

Altman:おそらく今年の夏頃になると思います。ただし、ナンバリングの仕方については現在も議論中です。GPT-4のときは「4」「4-turbo」「4o」とバリエーションが多く、ユーザーが混乱してしまった面がありました。

Mayne:確かに、どのモデルを使えばいいか迷う瞬間がありますね。

Altman:それが問題なんです。将来的には「GPT-5.1」「5.2」のようなサブバージョン表記も視野に入れています。また、ユーザーが過去のスナップショットを選べるような機能も検討中です。

ユーザープライバシーとNYT訴訟

Mayne:最近の話題として、New York TimesがOpenAIに対してユーザーデータの長期保存を求める訴訟を起こしましたね。

Altman:はい、その件については我々としても明確に立場を示しています。プライバシーはAI時代における最も大事な原則のひとつです。NYTのような企業が、AIプロバイダーにユーザーデータの保存延長を求めるのは過剰な要求であり、我々はそれに断固反対しています。

Mayne:Brad Lightcap氏が提出した公開書簡でも、その立場は明快でした。

Altman:まさにそうです。この訴訟をきっかけに、社会全体が「AIとプライバシー」の問題について真剣に向き合うきっかけになればと願っています。

ChatGPTに広告が表示される未来?

Mayne:広告モデルについてはどうでしょうか。ChatGPTに広告が入る未来はあり得るのでしょうか?

Altman:現時点では広告を導入していません。ただし、私は広告そのものに反対というわけではありません。問題は「AIの出力が、誰がいくら払ったかで変化すること」だと思っています。これが起きれば、ユーザーとの信頼関係は一気に壊れてしまいます。

Mayne:その「信頼」は、SNSや検索とは異なる次元ですね。

Altman:はい。だから、もし広告を導入するにしても、LLMの出力自体は絶対に中立を保たなければならない。その上で、クリックなどのアクションによって収益を得る方式なら、まだ検討の余地があると思います。

ソーシャルメディアとユーザー行動

Mayne:SNS時代には「エンゲージメント最優先」のアルゴリズムが問題を生みました。AI時代には、それとどう違う設計ができるのでしょうか?

Altman:ソーシャルメディアの最大の失敗は「短期的な反応」に最適化しすぎたことです。怒りや興奮はエンゲージメントを引き上げますが、それが長期的にユーザーにとって良いかは別問題です。

Altman:AIも同じく、1回の応答が最適でも、長期的な関係性では有害になる可能性があります。私たちは、ユーザーが「何を望んでいるか」と「何が有益か」を混同しないよう、慎重に設計しています。

Stargateプロジェクトと演算資源の重要性

Mayne:では、Stargateの話を聞かせてください。これはAIの計算資源を劇的に拡大するインフラプロジェクトと聞いています。

Altman:はい、Stargateは、これまでに例のない規模で演算資源を供給するための計画です。すでにテキサス州アビリーンで初のサイトを建設中で、全体の10%に相当する部分を担います。将来的には数千億ドル規模にまで拡大します。

Mayne:なぜそこまでの計算能力が必要なのですか?

Altman:今の時点でもユーザーがやりたいことの多くが、計算能力不足で実現できていません。もっと多くのGPU、もっと多くの電力、そしてより効率的なインフラがあれば、想像を超える体験が提供できるのです。

今後の進化と新しいAIデバイスの可能性

Mayne:最近話題になったのは、ジョニー・アイブ氏とのハードウェア開発ですね。これは従来の「スクリーンとキーボード」のパラダイムからの脱却でしょうか?

Altman:その通りです。従来のPCやスマートフォンは、AIが存在しない前提で設計されたものでした。今後は、文脈を理解し、環境と対話し、ユーザーに応じて行動する「AIネイティブなデバイス」が求められる時代になると思います。

Mayne:つまり、AIが「ユーザーを理解して助ける存在」になると。

Altman:ええ、会話だけでなく、会議に同席して重要な内容を要約してくれたり、どこまで共有して良いかを判断してくれるような存在に進化していくでしょう。

最後に

Mayne:最後に、いまのリスナーに伝えたいことはありますか?

Altman:AIは今後、私たちが想像もしなかった分野にまで進出していくでしょう。でも最も重要なのは、それを使う「人間側の力」です。好奇心、適応力、共感力、そして創造性——これらは誰にでも学べるし、これからの時代にこそ必要とされる力です。

回復力、適応力、創造性、他人が何を望んでいるかを理解するといったスキルが重要 一人一人がAGI以前の時代に一人の人間が行なっていたよりもはるかに多くのことを行うようになる、ということです。

Mayne:ありがとうございます。またぜひ次回もお話を聞かせてください。

🧠 翻訳・構成:AICU media 編集部
🎙Sam Altman on AGI, GPT-5, and what’s next — the OpenAI Podcast Ep. 1:https://www.youtube.com/watch?v=DB9mjd-65gw

 

Originally published at note.com/aicu on June 19, 2025.