2025年11月3日、AI国際日本映画祭(AIFJ2025)にて開催された「マチルダ」特別上映。本作の上映後のトークセッションの様子をお送りします。
モデレーター: 池田裕行
登壇者: 遠藤久美子(映画監督)
モデレーター(池田裕行/以下 池田):遠藤久美子監督を紹介いたします。遠藤久美子さん、どうぞ。ちょうど映画が完成した時にお願いさせていただき、ここに日本上陸を果たしたわけですが、この上映直後の今のお気持ちをお聞かせください。
遠藤久美子(映画監督/以下 遠藤):今回「マチルダ」を制作させていただきました脚本・監督、遠藤久美子と申します。よろしくお願いします。
池田:人前で話すのが本当に苦手だっておっしゃってたのが、そんなにですか?
遠藤:本当に大の苦手ですけど、作品だけ見ていただければと思います。人前が苦手というだけじゃなくて。この物語、実はもう四半世紀私の気持ち心の中で抱えていて、ようやく表現できました。
池田:ちょっと込み上げてくるものがありました。まず少し皆さんにご不自由をかけましたので、スクリーンを一番高いところに上げて、字幕を上に入れようか下に入れようか相当スタッフで議論したんですが、上に入れて絵を汚すよりは下の方がいいかということだったんですけど、ちょっとご覧になれなかったという方もいらっしゃると思うので、監督がストーリーを説明するのもネタバレまで言っては変なので、ちょっと触りのところまで。
遠藤:まず皆さん、窮屈なところで70分間。どなたも出ていかないで座って見ていただいてありがとうございました。字幕も見えなかったでしょうし、後ろの方は画像の半分も見えなかった方も多かったと思います。ですので、話が何のことなのか、どんなテーマなのかも全くわからなかったかも思います。AIのツールを使いましたが、私が伝えたいメッセージだとか気持ちのエネルギーが画面から滲み出たのかなと思って、それを皆さん何とか受け取ろうとして最後まで見ていただいたと思います。
池田:全くストーリーが伝わらなかったかもしれませんが、これが皆さんが映画館でしっかり見ていただけるように、ご自宅のテレビで見ていただけるように、これから配信などそちらの方も頑張っていきたいと思いますので、きちんと皆さんが日本語で見ていただけるまで応援していただければと思います。よろしくお願いします。今日はもうご覧になったという前提で、ある程度のネタバレも込みで。SNSなどでネタバレ禁止というですね。
(AICU編集部注:この先は作品のネタバレに関する要素に注意して脚色をく加えながら原稿化しています)
池田:あれはもうリアルな感じのお話、体験ということですか?
遠藤:そうですね、皆さんが見ていただいた最後シーン、あれはノンフィクションです。25年前に映像を私が"受け取って"、大切に心の中に納めておいて、いつかどこかで作品にしなければならないなと思いながら。当時は漫画家でもないですし、小説家でもないですし、その物語を皆さんに伝える手段がありませんでした。そこで2023年にAIが私みたいな庶民のレベルまで降りてきて、"私が受け止めた映像"が皆様にシェアできるんじゃないかと思って、マトリックスみたいに(脳にチューブを繋いで)みんなに見せてあげられるといいんですが、そういうこともできなかったので、やっとここでAIというものができてきて、私のような映像素人でもみんなに訴えられるのかなと思って。私自身が自分で作ろうと思ってAIのツールを初めてダウンロードしたのは今年の2025年の4月です。ですので、映像クリエイターのプロではありませんし、映画関係の仕事とかも一切してきたことはないので、本当にこの物語を伝えたいという一心で。今年の4月からMidJourneyから伝え始めました。今日は集まっていただいている方は当然AIに精通している方ばかりだと思うんですが、お恥ずかしながら私は4月に初めてアカウントをいろいろ作りまして、そこから"全て一から始めた"という状態で、9月末までに70分の長編を完成させました。
池田:しかし今、この直前にはベルギーの国際映画祭に出展して、それ昨日羽田に着かれたというスケジュールなんですけれども。
遠藤:そうですね。レイザーリールフランダース映画祭(Razor Reel Flanders Film Festival)というところでお声がかかりまして、作品出させていただいたんですが、そちらのAI部門の方ではやっぱり3分から5分、長くて10分ぐらいの作品が今のところ世界ではそのぐらいが標準かなと思ってます。ですので、長編というのはまず日本には私ともう1本作ってあるということを聞きしまして、そちらはセリフの方は声優さんが喋っているということで、セリフも含めて私は映像を全てAIで作りましたので、「日本で1本だけ」かなと思っています。
池田:音響に関しては何度も手にかけらっしゃって、5.1チャンネルで作ってある。
遠藤:はい、そうです。今回は2チャンで見ていただきましたが、データ自体は5.1で作っています。バルセロナに今住んでるんですが、バルセロナの家の向かいに女優のMEGUMIさんがうちの目の前に住んでるんですね。で、お友達になることがあって、今「私がこの作品を作ってる」っていう話をしたらすごく気に入ってくださって。MEGUMIさんが主催でジャパンナイトっていうのを各国の映画祭で行っているんですね。そのジャパンナイトにまずトレーラーを上映しようということで呼んでくださって、その時私もちろん素人ですし、1作目ですし、1分のトレーラーを作るだけでもAIで作るっていうことも非常に大変で、それにチャレンジして、なんと今年のカンヌ映画祭のジャパンナイトでトレーラーを上映させていただきました。そのところレイザーリールフランダース映画祭の創立者の方、パトリックがそのトレーラーすごく気に入ってくださって、ぜひこれは招待したいと。「今何分作ってある?」って言われて、『いやまだトレーラー1分だけです』とお話をして、「映画祭は10月の23日だ。10月の23日にぜひ長編でこれを見たい」と言われて「非常に内容面白いので、久美子行けるか?」って言われて、そんな風に言われて。ベルギーでデビュー戦で、いやもうこのチャンスは逃せないので、もうここは「気合でやります!」と答えました。私たちはチームも何もなくてですね、私一人で作っていて、そこになんと素晴らしい今回助っ人がですね、どこかにいると思うんですが、バルセロナから今日来てます。タイチ、です。私と彼の二人だけでこの映画を作りました。
遠藤:私も素人ですがタイチも素人です。私もタイチも。Adobe Premiereを今年の4月にダウンロードしてアカウントを作って、Premiereの編集とか音楽の編集、映画のカット割り、全て全く何の知識もなかったです。ただ彼がAIのように学習能力が速くて非常にAI向きな人材でした。彼は普通にサラリーマンしてますので、1日10時間は普通に会社で働き、その後帰ってきてから昼まで作ってもらったということで、2人で本当に脚本から何もないところから、とにかく"パトリックの希望に応えたい"ということで、10月の映画祭に間に合わせるために60分のものを頑張って作っていったら70分のものが完成したということで、彼の尽力がなかったら本当にこの映画が完成しなかったと思うので、大地に拍手をお願いします。ありがとうタイチ。
遠藤:ここにいらっしゃる皆さんも、ぜひ映画を作れるんじゃないかと思います。どんなに忙しくても、寝る時間さえ削ったら、形になるんじゃないかと思います。AIとともにある未来への不安とかね、皆さんが持つ中で、AIが作る、個人が自分の人生を変えていくと、何かを生み出していくというメッセージを持って、遠藤久美子監督として交わる作品が出現したということに関しては、本当に幸せに思っております。
池田:ひとまずここまで話をして、時間もありますので、質問をいただこうと思います。
AICU・白井暁彦:素晴らしい歴史の転換点に出会えて感動、感激です。僕も海外に住んでて、本当にこの「男性とか女性」とか、さらにバーチャルYouTuberみたいな仕事もしてたので、みんな「世の中が女の子になっていく世界」とか、それから遺伝子、同性婚、それからちょうどこの日本だと高市政権みたいなのがあって、男性なら「可愛い女の子になれたらいいのに…」みたいに思っているところ、それから男性自身の持っているロールだとか遺伝子だとか、そういったものが同性愛・人類愛というテーマの中で全てに答えていて、それがもう10年20年という時間の中で生まれたこの瞬間というのが、本当にシーンの中にあった「産みの苦しみ」みたいなところから感じられたので。これは「理解として合ってますか間違ってますか?」という質問です。そして、"まだまだもっとこの先"があるんですか?それとも?実はこれは例えばNetflixさんでシリーズになったとしたら?
遠藤:シリーズ1,2,3で各8話から10話ぐらいの内容がまだまだあって、ほんの一部を今日ご紹介したっていうところなのです。実は小説の第1巻を書き終わっておりまして、そちらは300ページになってます。それはこの映画の半分ぐらいなんです。私の中に降りてきているそのストーリーを全部表現し終わると、おそらく小説だと4巻から5巻ぐらいで全部いけるのかなというふうに思っていますので、そのうち皆様にも小説なのかシリーズなのか映画の1,2,3なのか、そのあたりでこの「悪魔の遺伝子」の全ての物語を皆様に届けきれるのかなというふうに思っています。つまり"降りてきたもの"の中でまだ出してないものが、いっぱいあります。今回作った中でも、AIで表現しきれないとか、ちゃんと人の形の手にならないとか、そういうことで没になったシーンっていっぱいありまして、そういったものだけでもまだ倍ぐらいの長さになるかなと思っています。
会場質問:どうも、こんにちは。めちゃくちゃ面白くて、特に悪魔のシーンなんか圧倒的にやっぱりVFXでも実写でも勝てないような凄まじいものが出たんですが、例えば僕はAIに一切触ったことないんですけど、これも小説化したらもっと面白いカメラワークとか、スピルバーグの宇宙戦争とかワンカットのような、そういうカメラワークの指示なんかはAIは細かく出すことが可能なんでしょうか。
遠藤:難しいですね。もちろんキャラクターこっちから撮ったらそのままの今度、横からとか、後ろから撮りたいんですけど。皆さんも気づいたと思うんですが、振り向いたら27歳のヒロインが振り向いたら45歳になったとか、いっぱいあるので、なかなかそのあたりは難しいんですが、でも本当に毎週毎週AIの新しいモデルがアップデートしてきているじゃないですか。ですので1ヶ月前に"完パケた時"(編集部注:完パケ=完全パッケージ、そのまま上映できるファイル)にはできなかったし、もうおそらく今日いじらせてもらったらもっと良くなるということがいっぱいあると思うんですよね。なのでもっと無限に良くなるはずだと思います。
会場質問:我々役者の事務所です。今後AIとライブアクションの融合というのは全映画人、映像制作の人たちは向き合うと思うんですが、そのあたり実写との融合、相互補助みたいなことはどのようにお考えでしょうか。
遠藤:そうですね、今回AIのキャラクターを使ってみて一番やっぱり困ったところは、"迫真の演技"というのがまだまだできなくてですね、かっこよく立って歩くところだったら出るんですけれども、心の底から悲しくて叫ぶとか、恐怖のもののような目に恐怖とか、そういった魂の叫びみたいなものはまだまだ再現しきれないものがあったので、そこはリアルの名優の方に演技していただいて。実際に泣いていただく、泣いたシーンがあったので皆さん気づいたと思いますし、気になったと思うんですが、「泣く」っていうことの指示をしても、なかなかポロポロ人間のようには泣いてくれなくてですね、ほっぺたに水滴がつくとか、そこがもういっぱいいっぱいなんですよ。なのでそれが本当に目頭からずっと落ちてポロポロ泣くっていうシーンはやっぱり本当の俳優の方にお願いできればなと思います。ただ美術に関しては、あんなセットを砂漠の真ん中に組んだりするのは本当に何十億もかかると思うので、美術はAIさんにお願いして、演技はAIの方にお願いとかそんな美味しいとこ取りなどもできたらぜひそんな風に作ってみたいなと思います。
池田:セットに関しては宇宙船であるとか基地であるとか、過去にあったものと「似たものは一つも作りたくない」というこだわりで、徹底的に自分でリサーチをして、新しい形で新しいものを生み出したということですが。
遠藤:そうですね。冒頭に出てきたハート型の飛行船みたいなのもあったと思うんですが、ああいったものもおそらく私はガウディの大ファンで。10回以上バルセロナに行った後にバルセロナに移住しました。自然の建物というのは直線がないもの、直線が自然の中だったらかなり不自然じゃないですか。すごくリスペクトしているガウディの作品が好きでしたので、未来のものもおそらく工場でたくさん作ったものではなくて、1から命が生えるようにビルを作るということが可能になっている世界なんじゃないかなと思って、可能な限り直線を排除して、街にしろ乗り物にしろ作りたかったと思います。
会場質問:2点質問がありまして、使ったAIのソフトはミッドジャーニーっていう話だったんですけど、それ以外にもあれば教えていただきたいというのと、あともう1点がセリフをいうシーンがあると思うんですけど、口の動きとセリフを合わせるみたいなところも教えていただきたい。
遠藤:ソフトはおそらく皆様が使っているものは端から全部試したと思います。世にある、例えば今のAIツール、そういったものは一通り使った中で一番シーンに合ったものを使っています。
https://corp.aicu.ai/ja/aiculab-20251010
池田:それではですね、実はサプライズ映像のご提供というのが、遠藤久美子監督サイトから。いわゆる普通のメイキング映像を作ってる作業をしてる映像とは違う、全く新しいメイキング映像がありますので、説明を見ながらということで、まずじゃあちょっとプレイしていただいて。
監督、日にち差し迫ってますけど、間に合いそうですか?これは都内某所、映画「マチルダ デビルズジーン」の撮影風景だ。この作品がわずか数ヶ月で出来上がった、その奇跡を我が番組取材班が独占取材を行った。「マチルダ・デビルズジーン、真夏の90日間」。おはようございます。ナインさん、今からどちらに向かうんですか?ペルーのレインボーマウンテンです。短い撮影期間にもかかわらず、撮影は世界各地に及んだ。こちらがレインボーマウンテンです。いろいろな層が堆積して綺麗な色です。歴史を感じさせます。
池田:この辺で監督がネタバレをしておくと、本当はさっきの男性が監督で、実は実写だということではなく、わざわざこういうものを作った。彼女はこの映画の主人公で、ずっと作っているので、こういった遊びのネタも作りながら楽しみながらやっている。
遠藤:(生成AIによるセットの撮影を見ながら)すごいセットですね。お金かけて作りましたね(笑)。大変でしたこれも。本当に個人資産で作りました。
池田:遊び心というか、どれほどエネルギーがあるんですか。
会場質問:英語で字幕が見えなかったので、よくわかんないことがありました。自分自身1ヶ月ぐらい前から「弱さの森」という絵本を描き始めて、それを映画化できないかなということを友人の映画監督から言われて、でも今日のを見たらお二人で作ったという話だったので。いま二人で作ってるんですけど絵本。それもできそうな気がしてきて。
遠藤:全然できると思います。
会場質問:私はまだまだAIのことはあまり知らないんですけれども、アプリのSoraを最近使っておりまして、今回どのように指示を出して、まず一シーン一シーンを指示を出せるかなと思っております。たくさんシーンがある中で難しいと思うんですけれども。
遠藤:いま世界中を旅してきて。旅行が趣味なので。娘と一緒に世界一周旅行をしてみたりとか、そういったことでいろんな各地を見てきた。それから最後のストーリー見ていただいたのでわかったと思うんですが、いろいろ怪我したり痛い思いをしたり、入院したり手術したり、そういった今までの人生で経験してきたことが、そういった痛みとか思い出ですとか、そういったものがAIに対して指示として出せたのかなと思います。やっぱり空想だけではない、内から積み上げてくるような感情を伝えないと。絵を描いて、こんな感じでこんな感情の表現にしてほしいとか、こんな叫びにしてほしいとか、今まで経験してきたことがAIが私の代わりに表現してくれたのかなと思っています。英語で結構細かく。そうですね、やっぱり先ほどもお伝えしたんですけど、日本語でのプロンプトというのがまだまだ弱くて、日本語でプロンプトを書くと「いらない看板」に「漢字」が。多分気を使っていただいて(AIが)『アジアの方が作りたいんだな』って読んでいただいて勝手に漢字が入っちゃったりとかするので、やっぱり日本語での指示はまだまだ難しいソフトなのかなと思います。
会場質問:東京表参道でドルビー・スタジオをやっているものです。ちなみに6月にバルセロナに行きました。その後カタルーニャ大使館の方とこの前会いました。次回はぜひ一緒に。ぜひよろしくお願いします。我々ミュージシャンなんですけれども、今回の映画を見まして、音楽はどうやって作られているのかなと、どこまでAIとかも使われているのかというのはちょっと興味があったので。
遠藤:実は今回の70分の中には、AIで作った音楽と人間の作家さんが作ってくださった音楽が2つ混在しています。どちらがどちらだっていうのを、もしかしたら最初にノートを渡ししてチェックしていただいて、「多分AI」とか「多分人間」とかって、もしかしたらわからないかもしれないです。例えば球体のところで日本語で歌詞で歌ってたものがあるんですが、あれはAIなんですね。そうなんです。あれは生で撮っているように聞こえるんですが、あれがAIで、一番最後のメタルバンドのあちらはAIです。オープニングの時のテクノだったりとか、そちらはDJの方が作っていただいたり、あとミュージシャンの方が作っていただいたりで、AIとミュージシャン2人が共同で作っています。
会場質問:とてもパワーを感じてすごい感動しました。ありがとうございます。初めて映像を作ったとおっしゃったと思うんですけども、作業工程の中でコンテとかご用意されたんでしょうか。もし用意されたとしたら、どういったツールとか手書きがあったりとか、映像の設計図はどういうふうに組み立てられたのかなということをお聞かせいただければと思います。
遠藤:こんなふうに組み立てました!っていうサンプルをここにドンと出せたらいいんですが、実は5月16日のカンヌ映画祭でパトリックに会って、10月23日の映画祭に招待したい。でも長編でと言われたので、脚本をそこからじゃあゆっくり書いて、カメラワークがとかセリフだったりを書いてる時間も全くなく、全部で70分ですので、1000本近い動画が必要なんですね。それを今日から作って、じゃあ4ヶ月後に納品って考えると、絵コンテも脚本も書いてる時間は全くないので、私とタイチとで「オープニングどうする?」じゃあこんな感じこんな感じって口頭で始まって、じゃあ私が静止画作ります。ミッドジャーニーで静止画作ります。じゃあバトンタッチして、じゃあこれを動画に、これどうしようかどうしようか。でシーンで、私はこのシーンから始めた。家でもタイチは絶対それ弱いからこっちにしようよっていうように、何度となく意見がぶつかりながら、脚本も絵コンテも何もない状態で、いきなり作っていく状態で。「どうやって完成するのかな」と思いますよね、なのでプロの方だったら逆にそれをトライしないと思います。まず脚本に何ヶ月、絵コンテに何ヶ月、キャスティング、じゃあ動画にと考えると「いくらAI」だとはいえ、プロの方だったらどうやってこれ計算するとできるっていうプランになるのかちょっとわかりませんけど、少なくとも「4ヶ月で完パケを納品」というところまでは絶対考えないので、プロの方にも相談をしたりしたんですが、やはり「いくらなんでも無理だよ」って。4ヶ月で完璧は「それは無理だし、お金もかかるし、それはもうチャレンジというかうまくいかないと思うよ」っていう温かいアドバイスはもらいましたが、私はもうパトリックに約束してしまったので、『これは気合で作るしかない!』ということで、普通の映画の工程を全部すっ飛ばしていきなり作っていって完成したのがこちらの作品です。
池田:本当に最後までありがとうございました。最後にアナウンスがありましたらどうぞ。
遠藤:上映の機会としては、映画祭がまだ日本の国内にありますので。来週11月7日の12時半から山形国際映画祭の方でオープニング上映をしていただくことが決定しました。これも本当にいきなり決まったことですので、私も初めて山形に伺うのですが、こういった形で皆さんのお友達のお友達という形で応援してくださる方が、ぜひここで上映しようって繋げてくださっているので、この後も機会があったらなと。まだ正式な上映とかは決まってなくて。まだ何も決まっていませんので、これが例えば映画館での上映だったりとか配信になるのか、こちらのQRコードを読んでいただくと私たちもホームページの方に飛びますので、何かそういった上映ですとかそういったことのアイデア、イベントのアイデアなどあったら、ぜひメッセージいただけたらなと思います。
池田:そしてフォロー、書き込み、ネタバレのない範囲でお願いいたします。ぜひ面白かったという方は、また見たいと、もっといい環境でもっと見たい、同じように伝えてください。ぜひ宣伝の方をお願いいたします。ぜひまた新しい上映機会をたくさん作って、再来日、再一時帰国を希望しております。皆様本当に最後までどうもありがとうございました。もう一度に拍手をお願いいたします。ありがとうございました。
遠藤:ありがとうございました。
AIFJ2025 2日目の「最大の見どころ」となった、「マチルダ」特別上映。本作は、AIFJ2025の作品公募の後に完成し、上映時間も「70分」という公募フォーマットを大幅に超えた大作が、突然にして現れた状態です。
しかし、仮にフィルムフェスティバルとしてコンペティションだけをみて、重要な最新作品を見逃すようなことがある権威高い映画祭よりも、前例がない第1回、この記念すべき日本初の本格的な国際映画祭「AIFJ2025」の場で、「マチルダ-悪魔の遺伝子」という時代を変える作品を共有することは大変な意味があったと考えます。ネタバレを避けて語るなら、AIならではの速度感、チームワーク、出産経験がある女性が作る、女性ならではの視点など、痛みや苦しみ、人類としての罪やその重みといった今までの「AI映画」の概念を大きく超えていった作品であるという点は特筆に値します。上映後の取材、人だかりの様子をみても、人々は「AIが作った二次創作」よりも「AIと日本人」が作ったオリジナルのストーリーに興味があり、共感するのだということを強く感じました。さらにそこに応援したいと思う人が集まり、作りたいと思う人が増えてくるという予感があります。今後も遠藤久美子監督と「マチルダ」の上映機会を応援していきたいと思います。
Originally published at note.com/aicu on Nov 3, 2025.