AICUマガジン編集長・しらいはかせ(工学博士@o_ob)と 猩々博士(自称:個人開発ニート@Mega_Gorilla_)が土曜日の夜に「エンジニアと語る」という番組を配信しております。これまでの配信の様子をまとめてお届けします。
Google Gemini CLIとOpenAI Codexの特性や活用戦略、API料金とLLMの使用コスト、そしてLLMの実装における課題について議論しました。Akihiko SHIRAIはGeminiのプロジェクト管理における便利なテクニックや長期記憶について説明し、猩々博士は自身が開発した配信向けの文字起こしツールを紹介しました。
二人は、単なるChatGPTの話題を超え、一歩踏み込んだマニアックなエンジニアリング雑談 を展開。猩々博士はClaude Codeを使用、しらいはかせはGoogle Gemini CLIやCodexといった具体的なツールを取り上げ、その特性や活用戦略について深く掘り下げました。
LLM(大規模言語モデル)の特性について、しらいはかせは「Codexがコンサルティングのように全体設計を丁寧に行う」のに対し、Geminiは課題を見つけると即実行する「鉄砲玉」のようだと比較しました。猩々博士は、Codexには「発想力がなく」、Claude Codeの方がユニークな提案をすると述べました。
実装面の課題として、しらいはかせはClaude Codeの「コード完成能力が弱く、後半になるにつれて性能が落ちる」傾向を指摘。一方、猩々博士はCodexについて「目先の修正に集中しがちで、関連する関数全体の修正を見落とす」ことがあると述べました。
APIコストに関して、しらいはかせはGemini CLIの料金が、特にログ分析や動画生成などで「非常に高額になる場合がある」と注意を促しました。
Geminiの活用戦略として、しらいはかせはgemini.mdファイルについて言及。これを「プロジェクトの作業再開に必要な普遍のルールや方針設定を記録するため」の長期記憶やシステムプロンプトのように使うことで、AIがプロジェクトの文脈を維持できると説明しました。また、Geminiが「人間には困難な深層のログを高速で読み解く」点も強みとして挙げられました。
猩々博士は、自身が開発した配信向けの文字起こしツール「LiveCap」を紹介しました。これはリアルタイムで音声を文字起こしし、英語にも翻訳することで海外の視聴者との交流を目的としています。
最後に、二人は次回の配信が10月4日に予定されており、Maker Faire Tokyo 2025の振り返りなどについて話す計画を共有しました。
第2回配信では、猩々博士としらいはかせが「Maker Faire Tokyo 2025」の突撃取材をテーマに語りました。しらいはかせは風邪で参加できなかったため、現地で展示をしていた猩々博士が注目の展示をレポートしました。
猩々博士は、まず「ナンバー取得済み行動走行可能なこたつ型モビリティ」を紹介。これは電動キックボードの規格が「ガバガバ」である点を利用したもので、「市役所によっては取れるらしい」という話に二人は驚愕しました。
また、今年は学生によるロケット展示が多く、特に神奈川大学のロケット部が「テレメトリー技術」(データ計測技術)に強みを持っている点が注目されました。宇宙エレベーターの展示もあり、しらいはかせはロープ素材の課題、猩々博士は赤道上の海上に設置する必要性について解説しました。
猩々博士が個人的に最も注目したのは、「風洞実験装置を実際に作って持ってきてるチーム」でした。これは卓上サイズで翼周りの気流を可視化できる装置で、驚くべきことに「作り方をオープンソースで配布してる」といいます。煙の発生には「ヨドバシで売っている電子タバコ」(お香)が使われており、その煙の綺麗さにしらいはかせも「普通にインテリアとして良くない?」と感心しました。
今回の展示は流体実験装置に関連する事業を行っている株式会社ながれ技術研究所との共同出展という形で、空気の「ながれ」に関する体験展示を行います。両社はいずれも今年(2025年)に設立した新しい企業で、デジタルファブリケーションに代表される新たな製造業・製造形態のあり方を示したメイカーフェアの精神:メイカーズムーブメントに共感し活動をしている企業です。
ストラト・ビジョン合同会社
今年製品化した、プロフェッショナル用途向けの「超音波風速計ULSA PRO」と、「超音波風速計を用いたリアルタイム気流可視化システム - AEROVISION」を展示します。AEROVISIONはハードウェアコンテスト「GUGEN2023」においてはじめて公開したシステムですが、今回はプロジェクターを使った床面への直接投影や、音速から瞬時に温度(音仮温度)を表示する機能などを盛り込むアップデートを行っています。
株式会社ながれ技術研究所
3Dプリンターの普及により産業・学術レベルの流体実験装置である「風洞」を製作できるようになりました。この「風洞」をより手軽に体験してほしいとの想いで、オープンソース風洞普及プロジェクトOpen Wind Tunnel project “MyWindTunnel”を立ち上げました。公開第一弾として、このたび吹出型(エッフェル型)風洞モデル、吸込型風洞モデルを展示します。
スポンサー企業として、中国の「LILYGO(リリゴ)」が紹介されました。ESP32を搭載した安価なデバイス群(ブラックベリー風端末、スマートウォッチ、Eペーパー)が展示され、しらいはかせは特にEペーパー端末に興味を示しました。
さらに、猩々博士の前職である「建設用3Dプリンター」の話題も上がりました。材料のモルタルを扱う難しさとして、「ノズルから出るまでは固まってほしくないし、ノズルから出たら固まってくれなきゃいけない」という矛盾した制御の必要性を解説。猩々博士は、この技術で最も重要なのは「プリンターが大事じゃなくてその裏側に動いている機械がめちゃくちゃ大事」な点だと力説しました。
その他、コロナワクチン用に普及した「マイナス30度冷蔵庫」の払い下げ品を使い、「アイスクリームを作る機械」を展示していた人が紹介されました。この「スターリング冷凍機」の話から、しらいはかせは来年のMaker Faireに「食べ物関係で出るのはいいかもしれない」とコメントしました。
https://makezine.jp/event/makers2018/m0200/
最後に、二人は来年のMaker Faireへの共同出展を議論。しらいはかせが「AIおもちゃ作んない?」と提案しましたが、猩々博士は「ハードウェアめっちゃむずじゃないですか」 と現実的な課題を挙げました。
https://corp.aicu.ai/ja/marker-faire-tokyo-20251005
第3回配信は、しらいはかせと猩々博士が、最新のAI技術について深掘りする内容となりました。
配信は、しらいはかせの近況報告(家事、動画編集、ワークショップ準備)と、冒頭の音声トラブル(猩々博士がOBSで修正)から始まりました。猩々博士は、しらいはかせとハンドルネームが重複するため「博士」への変更を検討していると話し、一方しらいはかせは自身がエンターテイメントテクノロジーを30年近く研究する「ガチな博士」であると自己紹介しました。
本題に入り、しらいはかせは「Sora 2のAPIを使ってGoogleスプレッドシートから動画を生成するツールを作成していた」と明かしました。猩々博士が商用利用について尋ねると、しらいはかせは「API経由であれば可能」だと回答しました。
https://corp.aicu.ai/ja/googlesheet-20251009
作例として、サム・アルトマンのパロディ動画や、「ガールズ&パンツァー」の名前を一切使わずに「パンジャンドラムで戦う」というプロンプトだけで生成された「ガールズ&パンジャム」の動画が共有されました。猩々博士は、この「パンジャンドラム」(イギリスが開発した兵器で、ネットでは「おもちゃ」扱い)がテーマの動画クオリティの高さに驚きを示しました。
しらいはかせは、Sora 2が「拡散トランスフォーマーモデルと世界シミュレーターに基づいており、破綻が少なく、カメラワークやライティングも物理的に動いているように見える」と技術的特徴を説明しました。また、生成されたアイドルソング風MVの例を挙げ、「お任せ」を多用するプロンプトで高品質なものができると示しました。
一方で、しらいはかせは「元の作品の倫理的・著作権的な問題が生じる可能性」を強く懸念。OpenAIの現状を「赤信号みんなで渡ってるだけ」と厳しく指摘し、裁判による違法性の明確化が必要だと主張しました。これに対し、猩々博士は「まだ判決が出ていないため、技術の利用が赤信号であるかどうかの判断は難しい」と慎重な見方を示しました。しらいはかせは、自身が「生成AIが踏んでいる著作権問題を解決する技術」を開発していることを明かし、クリエイターが収益を得られる「JASRACのようなモデル」の構築を提案しました。
話題は日中のAI開発動向へ移りました。しらいはかせは、日本のAIスタートアップが「オープンAIなどの大手企業によって潰されるリスクがある」と指摘。猩々博士が「中国のコミュニティがオープンソース開発で進化している」点に言及すると、しらいはかせは「中国のエンジニアの数やマインドセットが日本とは異なる」と応じました。しらいはかせは、中国では「機械学習タスクがアルバイトとして一般的」になっており、学習(ラーニング)が根付いているのに対し、日本では「推論(インファレンス)の利用に焦点が当てられ、学習そのものへの投資が不足している」と分析しました。
後半は、ローカル環境でAIを動かす技術がテーマとなりました。しらいはかせは「既存GPUの価値が大幅に下落」し、Google Colabなどで安価に計算資源を使える現状を説明。NVIDIAの「DGX Spark互換機」が「データセンターで利用されるレベルの性能を持ちながらも、手元で使える」と紹介しました。
さらに、猩々博士は「GPD Win 5」という小型ゲームデバイスに搭載された「Ryzen AI MAXチップ」により、ローカルでのLLMモデル展開が可能になったと強調。猩々博士は、ゲーム機がAIモデルのベンチマークを公開していることに驚きを示しました。
AIの収益化について、しらいはかせはAI VTuberを例に挙げ、「コミュニケーション自体ではなく、アバターの衣装やガチャなどの付加価値にユーザーが課金する」プラットフォームビジネスの重要性を説きました。
また、両者は動画編集AIの必要性で一致。しらいはかせは「セミプロ配信者向けのツール」として、フットペダルで編集点を打ち込む自動編集ツールを提案し、「17,000円から50,000円といった高価格帯でも顧客がいる」と述べました。猩々博士も「カット編集だけでも大いに助かる」と同意し、AIによる粗編集と人間による仕上げというワークフローが提案されました。
最後に、次回の配信を10月25日に行うことが決定されました。しらいはかせがイベント会場の「IVRC2025 Leap Stage」から配信し、猩々博士が自宅からその映像を見て会場を紹介するという、ハイブリッド形式での実施が確認されました。
https://ivrc.net/2025/overview/
気になる内容は配信をご参照ください。AICUマガジンでも記事化予定です。
YouTubeは猩々博士のチャンネル
https://www.youtube.com/@HakaseLabs/streams
X-LiveはX@AICUaiです
お楽しみに!
Originally published at note.com/aicu on Oct 18, 2025.