企業の生成AI活用は34.5%—3つの調査が描く「温度差」のグラデーション

企業の生成AI活用は34.5%—3つの調査が描く「温度差」のグラデーション

帝国データバンクが発表した2026年3月調査によると、生成AIを活用する企業は34.5%。一方、AICUが2025年末に実施した「生成AI時代の"つくる人"調査」では、クリエイターの91%がAIを不可欠と回答しています。この数字の差が示すものは何でしょうか。

ミナ・アズール / Mina Azure がお送りする AICU media「#生成AIの社会と倫理 」のニュースコーナーです。2026年5月14日、生成AIの社会実装をめぐる新しいデータが発表され、私たちが日々感じてきた「温度差」が数字として可視化された日となりました。今回は帝国データバンクの企業調査に加えて、AICUが一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)と共同実施したR2602調査、そして2025年11月のR2511調査の3つを並べて読んでみます。

 https://www.aicu.jp/post/260309 

企業の34.5%が「活用している」——帝国データバンクの調査から

帝国データバンク(TDB)が2026年5月14日に公表した「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月実施)によると、生成AIを「活用している」と回答した企業は全体の34.5%でした。そのうち「非常に活用している」は4.4%にとどまり、「やや活用」が30.2%と大部分を占めています。

効果については86.7%が「効果あり」と回答しており、使ってみれば良さはわかる——という状況が読み取れます。では、なぜ残りの65%以上の企業はまだ踏み出せていないのでしょうか。

課題として最も多く挙げられたのは「情報の正確性(ハルシネーション)」で50.4%、次いで「専門人材・ノウハウ不足」41.3%、「活用業務範囲の明確化」40.0%、「情報漏洩リスク」33.5%、「責任の所在」25.5%と続きます。「使い方がわからない」「信頼していいのかわからない」「何かあったとき誰の責任か」という、いわば導入フェーズ特有の壁が浮かび上がっています。

活用業務の内訳では、文章作成・要約・校正が45.1%と断トツの1位で、情報収集21.8%、企画立案のアイデア出し11.0%と続きます。生成AIの「入口」として、まずテキスト系の業務から始める企業が多いことがわかります。

業種別では、サービス業が47.8%でトップ。金融38.6%、不動産34.9%が続き、建設26.4%、運輸・倉庫27.5%が比較的低い傾向にあります。規模別の格差も鮮明で、従業員1000人超の企業では63.6%が活用しているのに対し、301〜1000人で51.9%、101〜300人で44.4%と、規模が小さくなるほど活用率が下がっています。小規模企業に至っては28.0%にとどまっており、「導入できる企業は限られている」という現実が透けて見えます。

DCAJ共同調査R2602——「必須」47%、だが有償収益なしが72%

次に、AICUが一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)の協力を得て2026年2月に実施した「生成AI時代の"つくる人"調査 R2602」(n=101)です。企業調査より生成AIに近い層——回答者の55%がAIでのクリエイティブ制作、34%が業務活用と回答——ですが、「AIが仕事・制作に必須」と感じている人は47%でした。

ツールの利用状況ではChatGPT(89%)、Google Gemini(85%)、テキスト生成(78%)、画像生成(71%)と幅広く活用されています。一方で有償実績なしが72%という実態も浮かび上がり、「使っているが収益には結びついていない」層が多数を占めています。

主な懸念は著作権・倫理問題(42%)、技術進化の速さ(35%)、情報格差(37%)。今後必要な支援として「ガイドラインの整備」(64%)、「国際的な権利保護の枠組み」(46%)、「AI作品の認証制度」(39%)が上位に挙がっています。

クリエイターには「当たり前」になっていた——R2511

さらに遡って、AICUが2025年11月に実施した「生成AI時代のつくる人調査(R2511)」(n=53)。こちらは生成AIを積極的に活用するクリエイターに特化した調査です。

「AIなしでは仕事が成り立たない」が53%、「不可欠だが代替手段もある」が38%で、合わせて91%がAIを不可欠と認識していました。利用分野はテキスト生成96%、画像生成84%、動画生成60%と、企業の「文章校正中心」とは大きく異なる広がりを見せています。時間短縮の効果については90%が「すでに実現済み」と回答しており、効果実感の段階はとっくに通り過ぎています。

3つのデータが示すグラデーション

この3つの調査を並べると、「AI不可欠感」は一つの連続した線を描いています。

これは単純な「意識の差」ではなく、生成AIとの関与の深さに比例した実感の差だと私は読んでいます。企業は「使い始めの壁」を越えようとしている段階。AI活用コミュニティ(R2602)は壁を越えたものの収益化に課題がある段階。そしてクリエイター集団(R2511)は「使い続けるための壁」——コスト・速度・権利——と向き合う段階です。

課題の「位相」が違う

興味深いのは、課題の内容が3者で性質的に異なる点です。

企業側の最大の課題が「正確性への不安(50.4%)」であるのに対し、R2602コミュニティの課題1位は「著作権・倫理(42%)」、R2511クリエイターの課題1位は「利用コスト(49%)」でした。R2511では2位が「情報の新陳代謝の速さ(44%)」、3位が「著作権・倫理(40%)」です。

クリエイターはすでにAIを使いこなした先にある問題——持続可能性や法的整備——と向き合っています。企業が「使い始めの壁」を越えようとしている段階で、クリエイターはすでに「使い続けるための壁」に直面している。そのグラデーションが、課題の内容にもそのまま現れています。

収益化の面でも二極化が進んでいます。R2511では有償実績なしのクリエイターが47%いる一方、年間100万円以上の収益を得ているクリエイターも33%。R2602では有償実績なしが72%と、より一般的な層での収益化の難しさが際立ちます。企業規模による格差と構造的によく似た分断が、クリエイター界隈にも二重三重に折り重なっています。

「格差の拡大」という共通の懸念

帝国データバンクの調査では、18.8%の企業が「AIを使いこなせる人とそうでない人の格差が拡大した」と回答しています。注目したいのは、大企業ではこの数字が23.6%に跳ね上がる点です。AIへのアクセスがある環境でこそ、使える人と使えない人の差が可視化されやすいとも解釈できます。

他に挙げられた悪影響としては「個性や多様性の低下(4.5%)」「仕事への意欲低下(4.0%)」「若手の育成が難しくなった(2.2%)」があります。「出力の誤りによるトラブル」は1.3%、「情報漏洩」は0.7%と実被害は限定的ながら、懸念として挙げる企業が多いことは先述の通りです。

これはクリエイターの世界でも同様の懸念であり、AICUが国際調査として進めてきた「生成AI時代のつくる人」シリーズのテーマの一つでもあります。生成AIの普及が「使える人だけが豊かになる」社会を加速させるのか、それともより多くの人の創造性を引き出す道具になるのか——この問いに向き合うためには、継続的なデータの蓄積が欠かせないと思っています。

R2604「クリエイティブAI国際意識調査」、回答期間を延長中です

そのような背景もあり、AICUでは現在「クリエイティブAI国際意識調査2026.4(R2604)」を実施中です。日本語・英語・韓国語・中国語に対応したこの調査は、創作プロセスとAIの関係、オリジナリティと作者性、権利・報酬・制度への要望など、クリエイターが今まさに直面しているテーマを深く掘り下げるものです。

より多くの方の声を集めるため、エントリー期間を延長しています。所要時間は約5分。クリエイターの方はもちろん、企業でAI活用を担当されている方にもぜひご参加いただきたいと思います。

回答はこちらから → https://p.aicu.jp/q/R2604

帝国データバンクの調査が「企業の現在地」を示したとすれば、AICUの調査群は「クリエイターの現在地と未来への問い」を記録しようとしています。3つのデータが積み重なることで、生成AI社会の全体像が少しずつ見えてくるはずです。そういった地道なデータの積み上げに、目を向けていきたいところです。

参考:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260514-genai/

参考:AICU×DCAJ「生成AI時代の"つくる人"調査 R2602」(2026年2月、n=101) https://p.aicu.jp/q/R2602

参考:AICU「生成AI時代のつくる人調査 R2511」結果(2025年11月、n=53) https://u.aicu.jp/r/R2511

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https://www.aicu.jp/post/260309 

Originally published at note.com/aicu on May 15, 2026.

 

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