【AI時代のアート】光を編み、構造を奏でる。3Dプリントの概念を書き換える「130」の静かなる革命

【AI時代のアート】光を編み、構造を奏でる。3Dプリントの概念を書き換える「130」の静かなる革命

2026年1月29日〜31日に虎ノ門ヒルズ(TOKYO NODE)で開催された「TOKYO PROTOTYPE(東京プロトタイプ)」、このイベントでは、大阪・関西万博やミラノデザインウィークなどで注目されたクリエイターや企業による、AI・ロボティクス・空間演出などの実験的なプロトタイプやアート作品・計26組が集結しました。

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冬の澄んだ空気が残る虎ノ門。かつて、この時期の東京には「文化庁メディア芸術祭」という、表現者たちの熱い息吹が交差する季節がありました。2026年、AIがアートやクリエイティブの根底を揺るがす今、その魂を継承するかのように現れた「TOKYO PROTOTYPE 2026」は、入場制限が続くほどの熱狂に包まれていました。

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TASKO x Abstract Engine - TOKYO PROTOTYPE

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最新のAIが生成する非現実的な美しさが並ぶ中、パブリックスペースで静かに、しかし圧倒的な実存感を持って佇んでいたのが、マグナレクタ株式会社・加藤大直氏によるプロジェクト「130(ワンサーティ)」です。

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マグナレクタ株式会社・加藤大直氏のプロジェクト「130(ワンサーティ)」。幸運にも会場で加藤氏ご本人に、その設計思想の深淵を直接伺うことができました。

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マグナレクタ株式会社・加藤大直氏と作品「130(ワンサーティ)」

「空中で立てていく」という建築的思考

加藤氏の手法は、私たちが知る3Dプリントとは一線を画します。それは積層ではなく、空間への「建築」そのものです。

「我々はこの二次元の積層ではなくて、どっちかというと建築の梁と柱を空中で立てていくような、そういう技術を基礎から研究しているのです。」

熱可塑性樹脂を流体として扱いながら、空中にダイレクトに「線」を描き、結節点を作っていく。その背景には「基礎研究から応用研究まで一通りやっている」という執念にも似た技術への自負があります。

それは、プリントというよりも、計算機が物理法則を読み解きながら紡ぎ出す「デジタルの機織り」。かつてディスプレイ越しに見つめていた自由曲面を、氏はそのまま物理的な「骨格」へと解き放ちました。

「一番星」を物理現象として定着させる

展示されたルームランプ「ヘリオ(Helio)」は、単なる照明器具を超えた、光学的な実験体でもあります。

「着想元が一番星なんですよ。」

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直接触って回転させることができる。

コアに向かってギュギュギュッと収束していく四角錐の集合体。どこから見ても真ん中に行くような形状。直接光も入るし、屈折光も美しい。「ピラミッドを底面から見たような感じ、あるいはピラミッドを6面から押さえているような」と氏が説明するその複雑な格子を光が通り抜けるとき、計算された「屈折」が宝石のような輝きを生みます。物理的な光と出会って初めて完成する美しさ。加藤氏は、本来は見えないはずの「光の道筋」を、触って動かせる樹脂のフレームによって可視化してみせたのです。

「裸体で美しい」というトポロジーの極致

加藤氏との対話の中で、最も核心を突いていたのが「マネキン」と「トポロジー(位相)」の関係性でした。氏は、椅子や箱といった「メタマテリアル」ではなく、「裸体で美しいマネキン」をつくるための構造を探求しています。

「今回、結構彫刻的な形でトポロジーを組んでいるので、アニメーションで動くためのトポロジーはしてないんです。造形美として、マネキンとして美しい、『裸体で美しい』みたいな形で。やりすぎると生々しくなっちゃいますし、本当にやりすぎちゃうと、ただのカチカチした形になります」

通常のコンピューターグラフィックスであれば、最も解像度を割くべきは「顔」や「鼻のあたり」といった視線が集まる場所です。アニメーションであれば口の周囲が最も変形します。しかし、現実に立つマネキンにおいて氏は、体重を支える足や力を分散させる腰に、最も濃密な構造を注ぎ込みつつ、「存在の美」のための構造として、脚部、腰、上半身といった人体の美をメッシュで追求しています。

「やはりその足がしっかり支えて、腰をちゃんと分散させてあげる。そういうところが、見どころとして美味しいんですね。構造体なのですぐメタマテリアルになっちゃうんですけど、正しくデザインしてあげないと美しくなくなっちゃう」

21世紀の彫刻、その再発見

加藤氏が目指すのは、単なるプロダクトの製造ではありません。氏の視線は、デザインの歴史そのものに向けられています。

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ゲームや映画で使われるような3Dの形状をそのまま再現可能です。現実世界と同じ尺度で造形したり、巨大な形状を造形し繋げることも可能。色も透明や不透明色に対応し、個々のフレームは手工芸のような表情を持ち工業製品のような冷たさを感じさせません。

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既存の製品は外装自体が形状を保持するための構造体になっていますが、130は外装ではなく骨組みを造形するため、既製品に見受けられるようなパネル構造やシェル構造で出来ている製品に比べ非常に軽量です。

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荷重がかかるなど、強度の欲しい形状に対して格子状に埋めて形状を生成することも出来るので非常に堅牢です。また軽さが必要な部分や強度が必要な部分の粗密の分布も出来るため堅牢さと軽さを両立します。

部分的な破損に対しては部分的に完全修復でき、また全て解体して新しい物を作ることも可能です。解体した素材は新しい素材として自社内で再生成するため超最小のフットプリントで造形と解体の循環を達成しています。

樹脂を溶かし、構造を編み、空間に形を定着させる。そのプロセスにおいて、デジタルなパッチ分割は、いつまでも「正しい形」を求め続けます。

インタビューの最後、氏は「また新作ができたら見たい」という私たちの言葉に、「ありがとうございます」と力強く答えてくれました。

AIが情報の海を広げ続ける時代だからこそ、私たちは加藤氏が編み上げた「裸体の美」に、確かな手触りを持った未来の姿を確信しています。ミラノや世界が注目するその技術が、次にどのような自由曲面を描き出すのか。私たちはその「発見」を待ちきれません。

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🔗 もっと深く知るために

加藤大直という人物の情熱に触れる

元ヤンキーからNYの名門美大へ。挫折と好奇心の果てに、ISSEY MIYAKEや大谷翔平選手のアートワークまでを手掛けるようになった波乱万丈な軌跡。👉 【Cemedine Reports】革新的な造形美で世界に挑む加藤大直の半生

https://www.cemedine.co.jp/cemedine_reports/naokikato2025interview.html

「130」の哲学と最新プロジェクトを見る 世界陸上のインスタレーションから、ミラノデザインウィーク、そして乃木坂のショールームまで。変容し続ける価値の姿。→ 130 (OneThirty) 公式サイト

Originally published at note.com/aicu on Feb 1, 2026.

AICU Japan

AICU Inc. AIDX Lab - Koto

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