本記事はAppleが2025年9月10日(日本時間AM2時)に開催した新製品発表会のレポートです。手話通訳士とともに発信された約1時間11分の発表動画を正確に分析していきます。最後にAICU編集部としてのまとめもお送りします。
デザイン哲学と新UI「Liquid Glass」:見た目ではなく“どう機能するか”
Appleは冒頭、「デザインは外観だけでなく、どのように機能するかである」という考えを再確認した。製品から小売体験、ソフトウェアの細部まで“デザイン中心”であることを強調し、新しいUIとして「Liquid Glass」を披露。日々の操作に流動性と生き生きとした感触、柔軟性を与えると説明した。
AirPods Pro 3:音質の刷新に「ライブ翻訳」と「ワークアウト計測」を統合
新しい AirPods Pro 3 は、独自設計のマルチポート音響アーキテクチャにより空気の流れを精密に制御し、低音や音場を改善。超低ノイズマイクと計算オーディオ、新しいフォーム混合イヤーチップでアクティブノイズキャンセリング(ANC)は従来比で大幅に向上したとする。さらに、Apple Intelligence を活用したライブ翻訳を追加。近くの人との自然な会話を支援し、多言語の現場でも使いやすさが増した。
装着性は1万人以上の3D耳スキャンと10万時間超のユーザーリサーチを踏まえて再設計。5サイズの新イヤーチップとIP57耐汗・耐水で運動時の安定性と耐久性を高めた。ワークアウトでは AirPods 単体で心拍をとらえ、iPhoneのフィットネスアプリで約50種の運動を記録。日常の移動・撮影・配信の裏で静かに働く“見えない道具”としての領域を広げた。
Apple Watch Series 11 / SE 3 / Ultra 3:健康指標の拡充と衛星通信
Series 11:高血圧通知と睡眠スコア、24時間バッテリー
Series 11 には、光学式心拍センサーの応答から長期的な高血圧の兆候を検出し通知する高血圧通知が新搭載。さらに、睡眠の質を複数指標から算出する睡眠スコアで、改善のための手がかりを提示する。筐体はIonXガラスとセラミックコーティングで耐傷性を高め、5G対応、最大24時間のバッテリー駆動を実現した。
SE 3:常時表示、温度センサー、急速充電
普及機の SE 3 にも常時表示ディスプレイ、S10チップ、ダブルタップなどのジェスチャー、手首温検知(推定排卵含む)と睡眠関連の新機能を搭載。初の急速充電で15分の充電で最大8時間の通常使用を追加できるとした。
Ultra 3:衛星通信と最大42時間のバッテリー
スポーツ&アドベンチャー向け Ultra 3 は、広視野角OLED+LTPO3の大画面、5G、そして衛星通信に対応。僻地でのSOSやメッセージ、位置共有をサポートし、長時間駆動のバッテリーと3Dプリントによるリサイクルチタン筐体を採用した。
iPhone 17:A19とProMotion、48MPデュアルフュージョン+新フロント「Center Stage」
iPhone 17 は 6.3インチの薄縁ディスプレイで ProMotion(可変120Hz)と常時表示に対応。屋外ピーク輝度は3000ニト。Ceramic Shield 2で耐傷性は3倍、7層の反射防止コートで屋内外の可読性を高めた。A19チップはディスプレイエンジンとNeural Engineを強化し、Apple Intelligence のオンデバイス処理やゲーム性能、バッテリー効率を底上げする。
カメラは48MPデュアルフュージョン(メイン+光学品質2倍相当)に加え、48MPの超広角を新搭載。フロントは独自形状のCenter Stageカメラで、向きを変えずにランドスケープ自撮り、AIでの自動トリミング・回転、手持ちビデオの高安定化など新しい表現を可能にする。
iPhone Air:極薄・軽量設計、A19 Pro、背面Ceramic Shield、Dual Capture
新登場の iPhone Air は“信じられない薄さ”を掲げ、6.7インチのProMotion/常時表示/3000ニト、前面だけでなく背面にもCeramic Shieldを初採用。内部構造の再設計で主要コンポーネントを上部プレートに集約し、軽量かつ強靭なチタンフレーム(リサイクル80%)を採用した。A19 Pro はCPU・GPU・AI処理を強化し、N1(Wi-Fi 7 / Bluetooth 6 / Thread)や省電力な自社モデムC1Xで通信も刷新。eSIM専用設計で内部スペースを電池に振り向け、薄型ながら終日のバッテリーを確保する。
カメラは48MPのフュージョンシステムと、フロントのCenter Stageを搭載。Dual Capture Video(前後同時撮影)にも対応し、ライブ会場の“自分+ステージ”や、取材・ドキュメンタリーのリアクション撮影に向く。
iPhone 17 Pro / Pro Max:熱設計の再発明、48MP×3と200mm、ProRes RAWとGenlockでプロ現場へ
プロ向けの 17 Pro / Pro Max は、素材・構造から再設計。アルミ一体型ユニボディとベイパーチャンバーを組み合わせ、熱を筐体全体へ迅速に逃がす。航空宇宙グレードのアルミ合金は従来のチタン比で熱伝導性が約20倍に向上し、持続性能と握り心地を両立。A19 Pro(各GPUコアにニューラルアクセラレータ、より大きいキャッシュとメモリ)と新熱設計の組み合わせで、従来Pro比最大40%の持続性能向上をうたう。
「アークナイツ:エンドフィールド」がビジュアルを駆使しながらも「長時間プレイ」できる、という代表として扱われました。
前面はCeramic Shield 2、背面もCeramic Shieldに刷新し、耐傷・耐割れ性を高めつつ内部バッテリー容量の余地を生んだ。eSIM専用モデルでは物理SIM領域をバッテリーへ充当し、Pro Max は動画再生で最大39時間と過去最長を更新。
カメラは48MP × 3(広角/超広角/望遠)すべてがフュージョン化。新しい48MPフュージョン望遠は100mm(4倍)と200mm(8倍)の“光学品質”ズームを実現し、自然やスポーツ、ステージ撮影での構図自由度を大きく広げる。機械学習を組み込んだPhotonic Engineやディモザイク処理で解像感・低ノイズ・色再現を改善し、写真のデジタルズームは最大40倍まで拡張。
動画では、Dolby Vision HDR、4K120、ProRes Log、ACES対応に加え、ついにProRes RAW収録をサポート。センサー出力の情報量を保持したまま撮れるため、ハイダイナミックレンジや高度なカラーグレーディングが前提の現場で有効だ。さらにGenlockにも対応し、複数カメラの厳密なタイミング同期が可能。配信・スタジオ・屋外大型収録まで、プロのワークフローへの適合性を一段と高めた。
<ProRes RAW 収録とGenlock 同期の紹介>
Appleはイベント自体の一部を iPhone 17 Pro で撮影したことも明かし、スマートフォンでありながら、機動力・画質・フォーマット互換性でプロ用途へ踏み込む姿勢を示した。
価格と発売時期
-
iPhone 17:256GB開始。価格は従来据え置き。
-
iPhone Air:$999〜。
-
iPhone 17 Pro:$1,099〜。Pro Maxには2TB構成が初登場。
-
Apple Watch:SE 3($249〜)、Series 11($399〜)、Ultra 3($799〜)。
-
各製品の出荷開始は9月19日(地域により異なる可能性)。
AICU編集部の視点:「つくる人をつくる」観点で見た今回のApple製品のアップデート
2025年の年末商戦にフォーカスを当てた今回の発表は、単なるスペックの積み上げではなく、「Appleのデザイン」に注目し、あらゆるプロフェッショナルな現場での生産性を直接引き上げる“系”の設計(デザイン)としてまとまっている印象を受けました。AirPods Pro 3 のライブ翻訳は、国際マーケティングの現場や国際共同制作や海外ロケでのコミュニケーション摩擦を下げ、運動計測は忙しいプロフェッショナルな日常のコンディション維持に効果を発揮することでしょう。Apple Watch は高血圧通知・睡眠スコア・衛星通信という“健康と安全”の面で、クリエイターの長期的かつ広範な活動継続を支える基盤になることでしょう。
iPhone Airは新機軸となりました。長いiPhoneの歴史において、miniやSEではなく「Air」として薄さと堅牢さ、そしてeSIMに限ることで高密度電池に最適化された設計はスマートフォンの概念を根底から見直した設計と言えるでしょう。
そして中核はやはりiPhone 17 Pro / Pro Maxです。冷却から筐体、センサー、レンズ、画像処理、収録フォーマット、同期まで、プロのボトルネックを順に潰す設計思想が見えます。特にProRes RAWとGenlockは、スマートフォンをサブカメラの域から“本線の制作現場”へ押し上げる機能群といえます。Blackmagic Designとの連携も注目です。200mm相当の望遠やCenter Stageのフロント運用、Dual Captureによる“被写体+自分”の同時記録は、ドキュメンタリーやライブ収録、教育・企業イベント、スポーツ解析など、映像文化の更新と、機動力が命の現場で威力を発揮することでしょう。
AICUのビジョン「つくる人をつくる」の観点で言えば、Appleは「道具の可用性(Availability)」「現場適応性(Adaptability)」「継続可能性(Sustainability)」の三点で明確な前進を示したといえます。手に取りやすい価格帯のSE/無印ラインと、薄さ・軽さで常備したくなるAir、そして本番投入できるPro/Pro Maxという“持ち出す→撮る→残す→つなぐ”までの動線が太くなったといえます。AICUではAI画像生成とならび、その素材などにも有効な、iPhone 17 Pro Maxを中核機材とした小規模映画制作ワークフロー、Dual Captureを使ったライブ・教育現場の即時配信テンプレート、AirPods翻訳×Watchの安全機能を組み合わせた海外ロケ実践手引きなど、実務直結の「つくる人をつくる道具」に注目していきたいと考えております。
リリース後のレポートや実験、「作ってみた」等の寄稿も歓迎です。
Originally published at note.com/aicu on Sep 9, 2025.
Comments