直感的なストーリー制作フローと、その可能性
Blooper(Blooper.ai)は、脚本からキャラクターデザイン、ストーリーボード、ピッチデッキまでを一貫して構成できる、次世代のストーリーテリング支援ツールです。今回、開発チームから「日本市場向けに使えるかどうか?」というレビュー依頼をいただき、日本人なら誰もが知っている昔話『桃太郎』を題材に試してみました。
原作:「桃太郎」楠山正雄(青空文庫)
https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/files/18376_12100.html
1. スクリプト起点の自動展開がすごい
まず驚いたのは、青空文庫にある『桃太郎』の日本語テキストを貼り付けただけで、キャラクター生成・シーン分割・ショット作成まで自動で補完してくれる点。50,000文字というロングコンテキスト対応も魅力的です。
ただし、画風は欧米風の写実スタイル。使用されている画像生成エンジンが何かは明示されておらず、どの部分が「見せ場」として抽出されたのかもわかりづらい印象でした。
新規プロジェクト作成

Start from ideaに青空文庫からのテキストをそのまま入れてみました


ストーリーを入れたらインスピレーションボードを使って画像素材をドラッグしていきます。

2. キャラクターデザイン機能は好印象
これができたらキャラクターデザインです。
登場したのは「おばあちゃん」「おじいちゃん」「桃太郎」の3名。
いずれもリアルな鉛筆スケッチ風で、一貫性のあるトーンが保たれており、プレゼン資料などでそのまま使えそうなクオリティでした。




ただし、疑問も残ります。
動物キャラ(犬・猿・キジ)や、敵キャラである鬼たちが出てこないのはなぜ?
物語の後半での追加が想定されているのか、それともキャラクター数の制限があるのか、今後の検証が必要です。
3. ストーリーボード編集の柔軟性
ストーリーボードの編集は、表形式(タイムライン/テーブルビュー)とカード形式(ボードビュー)の両方を切り替え可能で、非常に使いやすいUIです。

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各ショットに対し、「秒数」「ロケーション」「セリフ」「ナレーション」「キャラの動き」などを追記可能
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カードの順序をドラッグ&ドロップで並べ替え
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シーンごとの分割も視覚的に把握しやすい
右側にあるのがショットの計画でしょうか

脚本家・映像作家・教育関係者にとっては、非常に直感的な編集体験ができると思います。
改善希望点(特に日本語環境で)
✅ Export時に500エラー
複数ショットを含んだ状態でエクスポートすると、Internal Server Error(500)が頻繁に発生。原因は不明ですが、せっかく完成しても書き出せないのは大きなロスになるなあという印象です。
とはいえ、メール共有機能があるのは面白い仕掛けだと思います。

UIが英語
ブラウザの翻訳機能を日本語にして使ってみましたが、特に困る要素はなかったかも。でも日本の映像・舞台・脚本業界では「縦書き文化」「ト書き」「役名台詞」など独自フォーマットがあるため、それらに対応する柔軟性も求められそう。
✅ ムードボード画像の読み込みが不安定
インスピレーションボードは内部ではChatGPTが使われているのでしょうか。画像生成エンジンについては海外向けのキャラクターデザインなら使えるかもしれません。また商用で利用できるStable Diffusion(StabilityAI)系や、そもそも画像生成をComfyUIやNanoBanana等のAPI利用としてユーザーに選択させる、もしくは映像業界でよく使われているAdobe Stock / Pinterestとの連携などがあるとさらに親しみやすくなるかなと思いました。
総評:教育・映像制作ツールとして期待できる
以下のようなシーンで、日本国内でも十分に活用できる可能性を感じました:
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教育現場でのストーリー作り(国語・道徳・英語など)
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アニメ・漫画のプリプロ段階のアイデア共有
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VeoやWan等のAI動画生成ツールと連携したプロトタイピング
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Netflix等の多言語納品における対訳整理/絵コンテ支援
今後さらにブラッシュアップされれば、日本のクリエイティブ教育やプロトタイピングの現場でも、かなりの戦力になりうるツールだと感じました。
🔗 サービスURL
AIサービスの評価、レビュー依頼はAICU Inc. AIDX Labまでどうぞ。
☆本レビューは特に開発元から報酬等はいただいておりません。評価は2025年夏に行なっており、将来的な改善の可能性があります。
Originally published at note.com/aicu on Sep 27, 2025.
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