マーケティング・経営・コミュニケーションに関する先進の知見や潮流などを発信するビジネス情報サイト「ウェブ電通報」にてAICU Inc. CEO 白井暁彦のインタビュー記事が発信されました。
■AIの真価は安い・速いではなく「不可能を可能にする」こと
2024/10/04
斧 涼之介 株式会社 電通・白井 暁彦 AICU Inc.【AIの真価は「安い・速い」ではない! 電通ワークショップで生成AIの可能性を深掘り】
電通のクリエイティブ・テクノロジストたちが主催するワークショップ「dentsu prototyping hub」。
第5回のテーマは 「生成AI」 で、デジタルハリウッド大学大学院/AICU Inc.の白井暁彦先生を講師に迎え、高度な画像生成を学ぶ全4回のワークショップを実施しました。
今回は、ワークショップを振り返りつつ、白井先生と電通 斧 涼之介氏との対談を通して、生成AIの未来と可能性について探っていきます。
https://dentsu-ho.com/articles/9068
こちらの記事は、AICUが2024年3-4月頃に実施したクリエイティブワークショップに関する報告になります。関連して、こちらの記事もおすすめです。
■生成AI時代の電通。最重要スキルは「心を動かす力」
2024/06/26
児玉 拓也 株式会社 電通グループ・斧 涼之介 株式会社 電通
https://dentsu-ho.com/articles/8964
運や勘に頼らない「クリエイティブAI」のススメ
電通グループ本社クリエイティブ部門の社員の皆さまを対象に、175名もの参加者がオンラインで参加し、4週間・4日間にわたって実施したワークショップです。
<以下、当日の資料を交えながら紹介します>
★2024年3月当時の情報で構成されていることをご勘案ください。
Generative AI School概要
・DAY1「電通におけるAI活用について/活用事例の共有」
電通におけるAIストラテジー、AIガバナンス、リスク事例の共有を目的とした勉強会を実施。本格的に生成AIを触る前に、スクール参加者のAIリテラシーを高めました。
・DAY2「生成AI基礎 テキストを用いた生成AIの基礎」
プロンプトの正しい書き方やネガティブプロンプトの活用など、画像生成AIの基礎を習得しました。
・DAY3「生成AI上級 意図通りの絵をつくる」
「画像から画像を作り出す」「姿勢や表情を制御する」といった技術を学び、トンマナの制御、ブランドや商品・サービスなどに抱く印象、雰囲気、感情を、顔の表情や指の演技に至るまで調整する手法を実習しました。
・DAY4「生成AI実践 ハッカソン」
オンラインハッカソンとして、2時間という限られた時間での総合演習を実施しました。機能の復習をしつつ、モデル選択、同一衣装、同一人物、別シチュエーションといった要素をコントロールし、生成したいキービジュアルを完成させていきました。
全体を通して、「運や勘に頼らない」「人の意思を込めたクリエイティブAI」の重要性を強調しました。
Day2: 構成とポイント
教科書として「SD黄色本」を使い、その内容を丁寧に、かつ圧縮して実施していきます。
演習環境は、全員がリモート環境で参加し、175名という多人数であるため、初日はスキルと環境を確認する意味があり、Google ColabとFooocusを使用しています。
AICUがオープンに提供する Foocus日本語版
https://j.aicu.ai/FoooC
など、オープンソースの技術を使って、丁寧に解説していきます。
ワークショップ内では参加者がタイムラインに画像を共有していきます。
企業内ワークショップのため、ご共有できず残念ですが、さすが電通のクリエイター!という作品がたくさん共有されました。
その他、モデル、LoRAに関する知識、ライセンスなど、高度な話題が続きますが、ここは割愛です。
Day3: 構成とポイント
引き続き「SD黄色本」を使って、スピードと密度を上げた講習を続けていきます。
- Image to Image を活用した高度な画像生成
- ControlNet による精密な制御
- 大量のバリエーション出力と 人間の「選ぶ力」「ディレクションする力」 の融合
Day4: AICU 画像生成AI認定試験
Day4ではハッカソン形式で、時間限定で以下のような課題に取り組んでいただきました。
・課題1「ネガティブプロンプト」15分
・課題2「image to image: Outpaint」15分
・課題3「image to image: Inpainting」15分
・課題4「ControlNet – Canny」15分
・課題5「ControlNet – OpenPose」15分
・課題6「フリー課題」20分
モデル選択、同一衣装、同一人物、別シチュエーションに気をつけて
一つの絵を完成させていきます
上記の要素で独自のテクニックで進行させてもかまいません
総合演習では、既存のクライアントワークを画像生成AIを使って振り返ってみたり、ガンダム大好きな参加者さんが、独自の実写版コラボ企画を作ってみたり、サウナなどの難度が高い撮影を画像生成でレイアウト亜nを出してみたり…見せられないのが残念です。
その他、Adobe Fireflyとの違い、ライセンス、リスクなどについても総合的な質疑応答タイムを用意し、各参加者の作品を共有、表彰式などを行いました。参加者の皆さんの実力、平均値がギュッと上がったさまを参加者全員が共有しました。
ワークショップを終えての振り返り
広告代理店、エンタープライズにおけるクリエイティブ部門向けのクリエイティブAIワークショップ、AICUの振り返りとして知見をまとめておきます。
- 生成AIはあくまでも道具。「人間がものをつくる楽しさ」 を忘れてはいけない。
- 「つくる人」を増やすことで、新たな価値創造と市場の拡大に繋がる。
- プログラミング教室やシニア向けワークショップなど、あらゆる世代への教育 を推進。
生成AIは広告クリエイティブに何をもたらすのか?
生成AIは、広告クリエイティブの分野においても、大きな変革をもたらしつつあります。
AI画像生成による生成例と「プロ用途」での価値
なんとなく「きれいな絵だな」で見過ごしてしまうかもしれませんが……
実際にプロの広告写真の分野から見れば、素晴らしい夏の空、誰も居ない砂浜、ゴミのない海岸、いい感じの波打ち、タイヤ痕がない砂浜、そして「発売前で未公開の新車」をここに配置して撮影する必要があります。CGやVFX、人力で絵作りするのは「不可能ではない」のですが、この「カンプ」の時点でも「運と人的工数がかかりすぎる」という難点があります。
もちろん、しっかりとした予算があり、設計や品質が求められる分野の絵作りは今後も残るべきだと考えています。その中でも、試作や検討といったエンドユーザーに見えないコストや発想を作り出していくうえで、画像生成は目に見えるコスト効果を発揮します。
さらに、特に新しい感覚や新しい顧客、新しいエンゲージメントが求められる場合、その探求パラメーター数、次元は無限に増えていきます。
特に、LoRAに関する技術や制御、倫理関係は、これからの広告代理店にとっては重要であると考えています。
- 従来のプロトタイピングよりも 高速で多様なアイデア を創出。
- トライアンドエラー を繰り返すことで、より質の高いアウトプットを実現。
- 生成AIを使いこなす 「人間のクリエイティビティ」 こそが重要。
クリエイターや権利者が幸せになる仕組みづくりを
生成AIの普及に伴い、著作権や倫理的な問題への対応も急務となっています。
ポイント
- 生成AIのリスクは、法務・事業的な観点から 慎重に検討 する必要がある。
- 「やってはいけないこと・やってほしくないこと」 を権利者が制御できる仕組みが重要。
- クリエイターに利益が還元される フェアな収益モデル の構築が求められる。
まとめ:白井暁彦より
AIの真価は、単に「安い・速い」だけではありません。
人間のクリエイティビティを拡張し、 「不可能を可能にする」 ことこそが、AIの真の価値と言えるでしょう。
普段から、様々な画像生成AIを使いこなしている電通グループのクリエイターさん175名を相手に、より高度な使い方や、社内平均スキルを短い時間でぐっと上げる活動、そしてこの分野で博士(工学)を取得し、教育や研究を通して多くのクリエイターを生み育ててきた経験があるからこそできる最高の開発体験が共有できたことを嬉しく思います。
そして電通は、大きな会社です。法務や倫理面にも配慮しながら、生成AIを 「人の心を動かす」 ための強力なツールとして活用していく姿勢を見せています。大きな会社ならではの、大変なこともあります。でも組織だからこそ、より大きな経験を共有しながら、社会を次の世代にすすめるために、真剣に告知、広告、ビジネス、コミュニケーション、DX(AX,BX,CX,DX)に関わっていると感じました。
生成AIの進化は、まだ始まったばかり。
今後、どのような未来が創造されるのか、期待が高まります。
「つくる人をつくる」 AICUのミッション
AICU Inc.で掲げるビジョンは 「つくる人をつくる」。
生成AI時代において、全ての人がクリエイターになれる可能性を秘めています。現在はさらに最先端のモデルやワークフローを開発し、Stability AI APIやFluxを使ってCGWORLDの表紙などを担当させていただいております。ワークショップも、Google Colabに加えてAWSの使用、そして「Anifusion」のような漫画生成などもワークショップ可能です。次回は東京大学「メディアコンテンツ特別講義」にて10月17日に予定しています。世界的な動画ラーニングメディア配信企業「Coloso」とともに、一般・企業向けの商業利用可能な生成AIクリエイター向けコンテンツを開発・配信しています。またオンサイトワークショップでは、神奈川県をクライアントに、障がい者向けクリエイティブワークショップを開発しています。
■「超入門:Stable Diffusionではじめる画像生成AI」
動画公開 10/18(金) 18時 予定
https://j.aicu.ai/AICUXColosoJP
■「初級者:広告企画から動画制作までのプロセス」
動画公開 10/31(木) 18時 予定
https://j.aicu.ai/ColosoJPXAICU
■「ComfyUIマスター:カスタムノードとアプリ開発」
動画公開 11/22(金) 18時
なお、今回のこのブログのカバーアートは、上記「ComfyUIマスター:カスタムノードとアプリ開発」の中で解説しています。AICUの最先端の環境におけるLoRA活用テクニックが学べます。
最後に、ワークショップの企画いただいたDentsu Prototyping Hubのみなさま、ご支援いただいた役員の皆様、ご参加いただいたクリエイターの皆様、電通報での発信をご担当いただいたみなさまに感謝を記させていただきます。
これからも、最新・最先端・難度の高い「つくる人をつくる」案件をお待ちしております。
AICUによる企業向けワークショップ、お問い合わせはこちらから。
https://corp.aicu.ai/ja/products
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Originally published at https://note.com on Oct 4, 2024.
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