デジタルハリウッド大学の橋本大也教授と、デジタルハリウッド大学特命教授でもあるAICU Inc.の白井暁彦CEOが、それぞれのベストセラー書籍をもとに、ChatGPTやStable Diffusionなどの生成AIの最新動向を紹介しました。
人気著者が語る生成AIの魅力を一挙レポート
今回イベントレポートを書かせていただきます、AICU media のゲストライターです。工場のおじさんとしての目線でレポートしていきます!現地に参加できなかった読者に向けて、両著者の最新刊や #SD黄色本のサイン本即売会、交流の様子をお届けします。
私は初めてデジタルハリウッド大学に行きましたが、とても高いビルの中にあり、「こんなところに大学があるんだ」とドキドキしました。(このイベントに参加するために、岡山からきました!)
wikipediaより。このビルの3Fと4Fがデジタルハリウッド大学です!
AICU イベント告知記事→ https://ja.aicu.ai/event20250530/
3階へ行き、会場の受付を済ませた後、中に入りました。
(編集部:注)開演前に上映されていた動画
#AICU — AI Creators Union Demo Reel 2024 Summer
イベントの時間になり、スタートはデジタルハリウッド大学の杉山知之学長の動画から始まりました。
イベントがはじまる
写真:デジタルハリウッド大学の杉山知之学長の動画(AIの技術が入っているとは思えないくらい自然でしょ)
これはAIで作られた杉山学長のアバターが、デジタルハリウッド大学の入学式で講演している動画です。
ここで、杉山知之学長の発表で感じたことを率直に書きますね。
この動画を見て、最近はAIが仕事を奪うなどネガティブなニュースが多いけれど、このような使い方は素晴らしいなと思いました。
この動画、ただ学長が話をしているだけじゃんと思う人もいるかもしれません。
しかし、杉山知之学長は2021年よりALSという難病のため、体を自由に動かせず、声も出せない状況です。
AIを使って昔の声を再現し、AIの技術で表情を作り出すことで、まるで健康な時のように登壇している姿で動画の中で話をしていたのです。
この姿を見て、体の不自由な人々に対してAIがどれだけのサポートを提供できるかを実感できたんですよね。
AIが障害を持つ人々の生活をサポートする可能性を強く感じました。
橋本大也先生の話 — ChatGPTで作業時間が3分の1に?
続いて、今回のイベントのメインスピーカーの一人である橋本大也先生について紹介します。
さくっと一言で言うと、『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』(橋本大也著)という本を書かれた先生です。
本の表紙に、仕事時間を1/3に短縮できるって言葉が書いてありました。
え、えっー!仕事時間を1/3に短縮。。。まじか!?
そんな大きなことを書いてしまったら、めっちゃくちゃ叩かれてしまいそうと、ちょっと不安に思いました。みなさんも思いますよね?
しかし、登壇内容を聞いていたら、めちゃくちゃ納得できました。
橋本大也先生の話を書いたので読んでください。
橋本大也先生の話で特に面白かった2点
橋本先生の話は、主にAIで面白い映像を制作する方法にふれていました。
写真:実際にAIで作った動画。スクリーンで見る大きな恐竜は大迫力!
講演の序盤では、大画面に生成AIで作られた動画が流れていて、ワクワクする気持ちがおさえきれませんでした。
橋本大也先生の話で特に面白かったことは2点あります。
1点目は、実際に動画を作る工程を細かく説明してくれたことです。
2点目は、数学的なグラフにアニメーションを加えるとアートになることです。
これは1点目の話題で発表された、動画の製作工程の一部です。
通常、完成形しか見ることがないAI動画の制作過程について、プロの目線から具体的なツールの使用方法を教えてくれました。
橋本先生によるAI動画の手順の一例を紹介します。
① ChatGPTでストーリーを作り
②その段落ごとに Runwayを使って動画作成(日本語だと精度がよくないので英語に翻訳)
③ Uidoで音楽生成(ストーリーをもとに)
④ DIDでナレーションを追加
⑤動画を結合
この作業をAIなしでやろうとすると、たぶん、1ヶ月から3ヶ月くらいかかる内容(私が、前に動画制作をしている人から聞いた情報です)を、なんと1時間ほどで作れるというのです。
橋本先生の「仕事時間を1/3に短縮できる」という言葉は本当でした!
2点目の、数学的なグラフにアニメーションを加えるとアートになるという話題です。
普通のグラフはただ表示されるだけでは全く面白くありません。(面白いと思う人はすごくレベルが高いと思います)
しかし、ChatGPTに「このグラフをアニメーションにしてください」と指示を与えてグラフのアニメーションをつくり、音楽を加えて編集することで、グラフの印象ががらっと180度くらい変わるのです。
写真:この線グラフは、音楽に合わせて脈動しているところの写真。(一回、実際に体感してほしい。写真じゃ伝わらない。体感してみてください。)
他にも、ドーナッツチャートに音楽を加えると、カラフルで楽しいアートになるんです。
また、3次元サーフェスプロットに関しては、まるで新しい生物が誕生したかのような感覚になります。まるで新海で見たことがない生物を眺めている気持ちになるんです。これは実際に見たからこその感動でした。
しらいはかせの話 — 「世界で最も[おもしろい]生成AIビジネスをつくるには」
https://note.com/o_ob/n/n930c390b6dfa
続いて、今回のイベントのメインスピーカーの一人であるしらいはかせについて紹介します。
しらいはかせは、いろんなことができる方で、大ボリュームの発表でした。
なので、しらいはかせをさくっと一言で説明すると
「 画像生成AI Stable Diffusion スタートガイド 」を書いた人です。
写真:この本は、予約してすぐに買いました。個人的に、世界の生成AI画像をつくる教科書になるものだと思っています。
有益な内容が多すぎる!
正直、カルピスの原液一気飲みを3本くらいやった感じです。
なので、情報量の濃さと多さに途中から頭がついていっていないのです笑
実際の内容の1割ぐらいしか書き起こせなさそう。実際に発表を聞いた方ならわかってくれるはず!
つくる人をつくる
「つくる人をつくる」が生まれた理由には、しらい博士のこれまでの経験が濃縮されています。
『綺麗なグラフィックでも、おもしろくない』
印象的だったのは、「綺麗なグラフィックでも、おもしろくない」という言葉です。
この言葉は非常に深い意味を持っており、しっかり理解するには深海3000メートルまで潜る覚悟が必要です。なので、ここでは簡単に説明します。
例えば、非常に綺麗なグラフィックのAIアバターが全自動で会話をするアニメーションを作っても、見る人は3秒で飽きてしまいます。
つまり、面白くないのです。
ですが、そこに人の感情を反映させるような演出を人間が加えると、とても面白くなります。例えば、目線の動き、カメラのフレーミング、仕草などです。
つまり、面白いものをつくるためには、人の演出が必要だということです。
人がどこで面白いと感じ、感情が動くのかを考えながら手を加える必要があります。
この点においては、現時点では人間の手による演出がAIを上回っているのかもしれません。
人生のターニングポイント
しらいはかせの人生には、2つのターニングポイントがあるそうです。
1つ目は、「ゴキブリ」?
2つ目は、子供たちの遊びの本質の探究
「ゴキブリ」
ゴキブリと聞くと驚くかもしれません。
過去にしらいはかせが「ファンタスティック・ファントム・スリッパ」という作品を作った話です。
写真:「ファントムスリッパー」。今でも最先端だと思う。そんな技術を1997年に、やっていたしらいはかせは、すごすぎる。
この作品では、2匹のゴキブリの疑似体験が描かれています。1匹は感触を感じられ、もう1匹はただのグラフィックです。この疑似体験を通じて、リアルとバーチャルの境界を探りました。
なぜこの疑似体験が海外で「アメージング」と言われ、大きな反響を呼んだのかを深く考えたことが、1つ目のターニングポイントだったそうです。
子供たちの遊びの本質を探究したこと
日本科学未来館 (旧)常設展示『アナグラのうた 〜消えた博士と残された装置〜』
写真:「アナグラのうた」。自分が歩いたところを遡って、足跡をつくれるらしい。面白そう。この作品も10年以上も前に作られたそうです。
「アナグラのうた」を通じて、子供たちの遊びの本質を探求しました。
このプロジェクトでは、モーションキャプチャー技術を使って子供たちの遊びを可視化しました。子供たちが歩いたり、ダンスをしたりする際に足跡やマークが現れる仕組みを導入しました。
(編集部注)
ゲーム業界をやめて東京工業大学の博士学生に戻った頃から、子供たちが楽しそうに遊ぶ姿を観察し、博士論文を通して「遊ぶこと」の本質についてさらに深く考えるきっかけになったそうです。
【博士論文】「床面提示型触覚エンタテイメントシステムの提案と開発 白井暁彦」
『あそぶ』って言葉の意味っていろいろ。
「あそぶ」という言葉には、実にたくさんの意味があります。
写真:あそびの意味って、こんなに多い。
例えば、
* 遊ぶ(あそぶ)、 游(およぐ)、 戯れる(たわむれる)、 玩(もてあそぶ)、 弄ぶ(たわむれる)
このように、「あそぶ」という言葉には多くの意味が詰まっています。
英語の「play」も同じように、多義的な意味を持っています。
例えば、「play」はスポーツをする、楽器を演奏する、ゲームをするなど、さまざまな場面で使われます。これってすごく面白くないですか?
つまり、「あそぶ」という言葉は、それを通じて私たちの好奇心を大いに刺激するもの。
動作や使う人の思考や視点でも変わるって面白い。
遊びながら新しいことを発見したり、楽しい経験を通じて学んだりすることは、まさに好奇心をくすぐる最高の方法ですよね。
これからの人類に必要なこと
これらの「つくる人をつくる」に繋がる話を聴いて、好奇心を持ち、情熱を持って生きることが、これからの人類にとって何よりも大切だと思いました。
しらいはかせは、「情熱」と「ハルシネーション(幻覚)」という言葉を使っていました。
ここからは、しらいはかせの言葉を使いながら、私なりに解釈したことを書きます。
写真;昔のひとは、どうしてこの絵を描いたのだろう?そこに今求められている生きる秘密が隠されてそうです。
個人的に解釈したのは、人間の存在意義を考えると、好奇心を持ち続け、情熱を持って生きることが、最もハッピーな人生を送る秘訣だということです。
AIなどの技術がどんなに発展しても、人間が幸せに生きるためにはそれだけでは不十分です。目標を持ち、情熱を持って生きることが必要です。
例えば、極端な話、定年退職してやることがない高齢者の方がいたとします。(極端な例の話ですよ。)
無限に時間があるけどやることがない、これは地獄のような人生です。
逆に、日々好奇心を持ち、情熱を持って生きると、毎日が楽しくなります。
今日は絵を上手く描いて売ってみようという目標を持てるような毎日です。
これによって色々学べるし、人生も楽しいものになります。私自身、本気で情熱がある方が良いと思っています。
好奇心を持てるようになるためには、学ぶことが大切です。
その学ぶ機会を無限に提供できるのが、「つくる人をつくる」ということなのだと思います。
「つくる人をつくる」というのは、人間が持つ好奇心や情熱を育むことにあると考えています。これによって人生が充実し、ハッピーに生きることができるんですよね。
Stable Diffusionの画像生成の話
写真:Stable Diffusionの仕組み
https://ja.aicu.ai/sd20240530/
仕組みについての解説パートはこちらで資料が出ていました。
■Stable Diffusionの仕組み(入門編)
https://ja.aicu.ai/sd20240530/
最後に
学べることと情報量がとても多く、おなかいっぱいになったイベントでした!
他にも撮影不可の特別資料なども特別に公開されていましたが、現場にきた人だけの特権ということで、私からのレポートを終わらせてもらいますね。
お読みくださりありがとうございました。
イベント速報記事→https://ja.aicu.ai/talk20240530/
前回のイベント「デルタもんLoRAを作ろう!」ワークショップレポートはこちら
https://ja.aicu.ai/event20240516/
デジタルハリウッド大学の動画より
【公式60秒】デジタルハリウッド大学新CM『みんなを生きるな。自分を生きよう。2024』篇フルバージョン
【関連】
#SD黄色本 サイン本即売会も開催!生成AI書籍人気著者の2人が語る「ChatGPTとStable Diffusion丸わかりナイト」
https://ja.aicu.ai/event20250530/
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