【AICUはるフェス2026 Day2 セッションレポート②】「誰もがクリエイターになれる時代」の次に何が起きるか、歴史はもう答えを出している——井上博明×白井暁彦 Fes26Halu

【AICUはるフェス2026 Day2 セッションレポート②】「誰もがクリエイターになれる時代」の次に何が起きるか、歴史はもう答えを出している——井上博明×白井暁彦 #Fes26Halu

AICUはるフェス2026 Day2 セッションレポート(前編)
AiHUB・新井モノ × アニメプロデューサー・井上博明 × くりえみ × AICU代表・白井暁彦(しらいはかせ)
AICU media ライターのEMKOがお送りします。

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伝説のアニメプロデューサーと歴史から振り返る

「誰もがクリエイターになれる時代」——これほど希望に満ちた言葉が、同時にこれほど危険な響きを持つ時代があったでしょうか。
生成AIの急速な普及により、誰もがクリエイターになれる時代が到来しました。しかしこの状況は、歴史の中で何度も繰り返されてきた光景でもあります。

AICUはるフェス2026 Day2で行われた井上博明氏と白井暁彦氏の対談では、ゲーム産業50年の歴史を通じて、生成AI時代に起きうる「転換」と「創造」の道筋が語られました。本記事ではその前半パート、歴史的教訓を中心にお届けします。


アタリショック——「誰もが作れる」の先に何が起きたか

井上: 70年代の終わりにアメリカでAtariがテニスゲーム『ポン』を作って、日本もすぐに真似をして。Atariが売れてきたから拡大していったら粗製乱造しちゃって、クオリティがドンと落ちちゃって。

白井: アタリショックみたいなものがまさに生成AIの時代にめちゃくちゃ起きる可能性がある。Googleとかで「いっか」って行った途端に、突然値段上げ始めたり、誰でも作れるから粗製乱造もめちゃくちゃできて、面白いものも面白くないものも溢れてきて、途端につまんなくなっちゃう。

1983年の「アタリショック」では、品質管理のないゲームが市場にあふれ、消費者がゲームへの信頼を失いました。市場回復には数年を要し、その立役者が品質管理を徹底した任天堂だったことは、生成AI市場へのヒントになるはずです。


少年ジャンプとドラクエ——物語が日本のゲームを無敵にした

「CG/画像生成AIの誕生と変遷 文化的背景」の年表スライドとともに、50年の産業史を振り返る

白井: 少年ジャンプの裏技コーナー「ジャンプ放送局」。さくまあきら、堀井雄二、宮王(みやおう)。ゲーム作ってる人たちが漫画雑誌の片隅でキャラクターを作りながら裏技紹介したり新作紹介したりっていう仕掛け役までやりながらゲーム作ったんですよね。

編集部注:当時の「ジャンプ放送局」の面々

  • 堀井雄二(ゆう帝)
    後の『ドラゴンクエスト』の生みの親。ジャンプでは 「ゆう帝」 の名前で、ゲーム記事企画 「ファミコン神拳」 の中心人物として出ていました。 (ウィキペディア)
  • 宮岡寛(ミヤ王)
    やはりゲーム系の人で、ジャンプでは 「ミヤ王」 として登場。後に『メタルマックス』で知られます。 (ウィキペディア)
  • 木村初(キム皇)
    その後ゲームライターだけでなくゲームクリエイターとして活動し、代表的には 『メタルマックス』 『ジャングルウォーズ』 などに関わった人物として知られています。
  • さくまあきら
    ジャンプ放送局』の構成担当。後に『桃太郎伝説』『桃太郎電鉄』の作者として有名になった人です。
  • 鳥嶋和彦 『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』の鳥山明、『ウイングマン』『電影少女』の桂正明の担当編集者。「ジャンプ放送局」のコーナー「ファミコン神拳」の担当。

 

井上: まさにそういう時代。だから今AIでジャンプというメディアに匹敵するものが出てくる必要がある。

白井: 弊社がまさにそういう立場に立つべく頑張っています(笑)
ゲーム産業が爆発的に成長した背景には、ジャンプのような「発見と熱狂を媒介するメディア」がありました。生成AI時代にも、作品と受け手をつなぐ舞台作りとしてのメディアの役割は不可欠です。

井上: 『ドラクエ』は『ウィザードリィ』と『ウルティマ』を元にして、アメリカでパソコンゲームが広がってきた中の勝ち筋を日本にちゃんとやった。そこに鳥山明さんという、後から考えたらこんな強力な武器を投入するっていうのをなさって。日本のテレビゲームの道筋を作った。

海外は「操作性」、日本は「物語性」。技術的な操作性で差がつかなくなったとき、勝負を分けるのは物語を構想する力です。

原神の衝撃——同じ土俵で戦えば資本に負ける

井上: でも実際にゲームで言うと『原神』にやられちゃったじゃない。『原神』の成り立ちって日本のゲームの作り方の上にいるもの。基本的にみんな同じ軸の上で、お金をどのぐらいかけるかの競争になりかけてる。同じようなもので競争に乗っけてったら、中国に食われちゃう。お金があるから。

この構図は生成AIでも同様です。基盤モデルの開発競争はすでに巨額の資金力がものを言う世界になっています。同じ土俵で正面からぶつかれば、資本の大きい側が勝つ——ゲーム産業が身をもって経験した教訓です。

300人のエンドロールが「いらない」時代に

白井: 当時は『ファイナルファンタジー』で大体300人ぐらいエンドロール並んでましたね。

井上: そう。それが必要だったのが——

白井氏は、生成AIによってその前提が変わりつつあると指摘します。

井上: アニメ業界は今3つに分かれてて、Netflixとかで仕事受けてる人たちは30分のアニメを1億円ぐらいで受けてる。MAPPAとか東宝さんとかは1話5000万ぐらい。新規アニメが3000万前後、安いところで2000万ぐらい。

1話あたり数千万円のコストが「失敗できない」構造を生み、クリエイターの立場を不安定にしています。生成AIが制作工程の一部を担うことで、少人数でも大作に匹敵する品質が実現できる時代が見えつつあります。

同人からプロへ——1980年と2026年

井上: 80年に入った頃、マニアが自分で発表してたものをプロ側が引き抜くようになった。今度起きるのは今、2026年ですよ。今皆さんが発表してるものの中に「これは売れるんじゃないか」と引っ張ってこようって人たちがいっぱいいる。

井上: ガンダムが40年でキャラクターとして、大和も50年。そういった物語性をどのぐらい作れるかというところが1つポイントだと思う。

井上: 元々本当のマニアなのか仲間であるかっていうのは、まだ分かっちゃうんだよね。鍵取れちゃう。で、1番お金使ってくれる人って——言い方悪いけどおじさんなんだよね。40代以上で。

井上: 昔はオタクであることにためらいがあった。でも今はためらいがなくなった。イベントも増えて、いい時代になったと思う。ただいい時代になったからこそ、これが本物、これが本物じゃないっていう目利きが大事になってくる。「自分だけの○○」っていう推しの文化が成立してる。しかもそれが今、国をまたぎ始めた。

転換の先にあるもの

アタリショック、日本のゲーム黄金期、『原神』による逆転——50年にわたるゲーム産業の歴史は「転換と創造」の繰り返しでした。
生成AI時代に置き換えると、今私たちが立っているのは「ファミコン前夜」とも言える地点です。粗製乱造の波は確実に来る。しかし歴史は、物語の力と届ける仕組みを持った者が次の時代を作ることも教えてくれています。
では、転換の先でクリエイター個人はどう生き残るのか——。

後編では、井上氏と白井氏の対談後半から、これからのクリエイターに求められる姿勢と戦略を掘り下げます。


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登壇:井上博明 / 白井暁彦(しらいはかせ)
#AICUはるフェス2026 #生成AI #ゲーム産業 #井上博明 #白井暁彦

Originally published at note.com/aicu on Mar 23, 2026.

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