[特別寄稿] 連載1年半のAI漫画「YOUKAI」第1話を、Anifusionで丸ごと作り直してみた(後編)

[特別寄稿] 連載1年半のAI漫画「YOUKAI」第1話を、Anifusionで丸ごと作り直してみた(後編)

[YOUKAI × Anifusion]AI漫画フェスティバル開催中! 応募期間:2026年7月9日〜7月26日 コンテストページ → https://c.aicu.jp/2607

どうも、AICUコラボクリエイターの殻尾/殻Bee(からびー)です。

前編・中編では、Anifusionを使って「YOUKAI」第1話を丸ごと作り直した過程を、失敗も含めて全部お見せしました。カメラが揃わない、髪型が直らない、怖すぎるものが出てくる。あれはあれで、AI漫画制作のリアルだったと思います。

https://note.com/aicu/n/n302a653e34d6

https://note.com/aicu/n/n27d33fc19102

後編は、少し引いた話をしようと思います。

なぜ、こんなことをやっているのか。

連載を1年半続けてきて何がわかったのか。今の漫画をとりまく状況をどう見ているのか。そして、これからどこへ行きたいのか。今回コンテストの審査員という立場をいただいたので、その目線がどこから来ているのかも含めて、書いておこうと思います。

1. ライバルだった日

そもそもの始まりは、2024年11月22日に開催された第1回生成AIアートバトル「AIBATO」でした。

会場のスクリーンにお題が出て、制限時間内に画像を生成する。それを審査員と大勢の観客が見ている前でやる、という台湾発祥のフォーマットです。

私と、現在の原作担当であるしらいはかせは、それぞれ別々に応募していました

しらいはかせのことは、以前から知ってはいました。イベントでよく見かける、それなりの有名人でしたから。ただ、当時は面識はまったくありませんでした

結果は、しらいはかせが優勝。私が準優勝でした。

https://note.com/o_ob/n/nf7a760746933

で、私はその日のうちに、しらいはかせが運営するAICUコミュニティに入会しました

負けた当日です。我ながら気が早い。しかし正直なところ「印象的な初対面だったし、このまま終わらせるのはもったいないな」という思惑があったのも事実です。

そうしたら、しらいはかせから「ぜひ原稿をお願いしたい」と声をかけられまして。私はてっきり技術記事か何かを書くのだろうと思っていたのですが、蓋を開けたらそれが連載漫画だった、というわけです。

そうして2025年の正月から始まったのが、AI漫画「YOUKAI」でした。原作・設定設計をしらいはかせ、作画とキャラクターデザインを私が担当する体制で、今も続いています。

https://j.aicu.ai/Youkai

当時は、まさかここまでとんとん拍子に進むとは思っていませんでした。

これから応募される方にお伝えしたいのは、ここです。 大会に出たこと自体より、負けた日に自分からコミュニティの扉を叩いたことの方が、たぶん効いています。作品を出すというのは「そういう場所に自分を置く」ということでもあります。

2. 20年の経験が通用しなかった話

1年半描いてきて、いちばん大きな発見をひとつ挙げるなら、これです。

「一括完結型」の物語と、「連載型」の物語は、まったくの別物だった。

私はこれまで20年以上物語制作に関わってきました。でも、思えばその全ては「一括完結型」だったんです。ストーリーはここからここまで。登場人物は誰と誰。こういう流れで展開して、最終的にこうなる。全体を最初に設計してから作るやり方です。

だから正直、最初は「この経験を総動員すれば漫画もいけるだろう」と思っていました。

……全然ダメでした( ̄▽ ̄;)

連載型の世界はまるで違っていて、この先どうなるか分からないまま進行することがある。設定が後から変わることもある。とにかく流動的なんです。完成図を持って走り出すのではなく、走りながら地図を描き足していく感覚。

これは慣れるまで本当に苦労しました。ただ最近になってようやく、そういう物語の構築法にも馴染んできた気がします。自分の世界が一段広がったという実感があります。

前編で「1話でクロブチを成長させない」という判断の話を書きましたが、あれもこの感覚から来ています。今使わずに取っておくという発想は、一括完結型の設計では出てこないものでした。

https://note.com/aicu/n/n302a653e34d6

3. 「胸が大きすぎる」と言われた日

もうひとつ、連載を通して変わったことがあります。

「YOUKAI」の編集長は、原作も担当しているしらいはかせです。そして彼は、もともと漫画を描いていた人でもあります。

連載を始めた頃の私は、たとえるなら「美少女ゲームのシナリオライター」とか「ラノベ小説家」みたいな立ち位置でした。オタクが好きそうなスタイルが良くて、可愛い女の子を作ることに命をかけている。そういう感性です。

対して編集長は、自分が漫画を描いていた頃の経験と、漫画業界のあれこれを持ち出してきて、「それはこうした方がいい」と言ってくる。

「胸が大きすぎる」 「足が太すぎる」

そんなベタなやり取りも、普通にありました(笑)。

https://aicu.ai/manga/youkai/ep/02#p6

当時はもちろん、納得いかないことも色々あった気がします。でも1年半かけて、だんだんと落としどころが定まってきたんです。自分が描きたいものと、読者に届く形。この二つは対立しているようで、実はすり合わせられる。そのすり合わせ方を、私はこの連載で覚えました。

そして今回、コンテストの審査員という立場をいただきました。審査基準について「ツールの性能に頼った綺麗な画像だけではもったいない、こだわりや愛着を見せてほしい」というようなことをお伝えしています。

あの目線がどこから来ているかというと、まさにこの1年半のぶつかり合いです。私は審査される側だった人間で、ダメ出しされ続けてきた側です。だからこそ、綺麗なだけの絵と、作者の執着がこもった絵の違いには、それなりに敏感なつもりでいます。

4. 紙になる、ということ

「AI漫画」と聞くと、Web上だけで完結しているイメージがあるかもしれません。でも「YOUKAI」は、毎月AICUマガジンとして刊行されています。つまり紙の雑誌です。

https://aicu.ai/mag

さらにもうひとつ、最近始めた試みがあります。

渋谷ヒカリエ8Fにある「渋谷〇〇書店」に、AICUは棚をひとつ借りています。棚主が自分の選んだ本を並べて売る、シェア型の書店です。ここ数ヶ月ほど、その店頭でAICUマガジンを販売しています。

https://note.com/aicu/n/n502dc2ae6c9e

私も店頭に立ちます。棚の前で、実際にお客さんに手渡しで売る。

そしてその帰りに、白井先生とそのまま編集会議をするのが定番化しました。売り場から会議室へ直行、みたいな流れです。

これ、地味なようでいてすごく大事なことだと思っています。生成AIを使った制作って、どうしても画面の中だけで完結しがちです。数字とリアクションだけが返ってくる。

でも印刷された自分の漫画を手に取って、実際に買ってくれる人の顔を見るという経験は、そこでは絶対に得られないものです。

デジタルで作ったものが、紙になって、棚に並んで、誰かの手に渡る。この一連の流れを自分の目で見ておくと、次に描くものが変わります。

渋谷〇〇書店 https://www.hikarie8.com/books/

次回は8月8日、12:00-15:00に店番予定です。
その日の夜は、AICU Lab+NEO勉強会(オンライン)も予定されています。

https://ws.aicu.jp/series/labplus-neo/

5. 言語を越えること、そしてAIでは越えられない壁

ここからは、これからの話です。

コンテンツ業界において、グローバル展開はもう避けて通れない時代になりました。漫画も例外ではありません。

ただ、ローカライズというのは本当に手間と時間がかかるものです。漫画が世に出るルートはこれだけ多彩になったのに、コストや権利関係の問題で、個人の漫画家にはなかなか手が出せない。この構造自体は、実はあまり変わっていません。

勿論私自身、海外展開を実際にやったわけではありません。ただ「いつかやるなら何が壁になるんだろう」と気になって調べてみたところ、個人で海外に出ようとすると、だいたいこういうところで詰まるようです。

壁① 初期費用と投資回収 プロの翻訳者とレタッチャーに依頼して1巻(約200ページ)をフルローカライズすると、数十万円〜百万円単位の費用がかかります。出版社なら「長期的な版権ビジネスへの先行投資」と割り切れますが、個人や小規模レーベルにとっては、海外での売上だけで回収できるかどうかのリスクが大きすぎます。

壁② 発見性と窓口 出版社には海外の版権エージェントと交渉する専門部署があり、国際ブックフェアで作品を売り込んでもくれます。一方、海外の読者やパブリッシャーが、星の数ほどあるWeb漫画やKindle作品の中から日本の個人作品を見つけ出すのは至難の業です。SNSで海外向けにバズらせるにも、言語と時差の壁があり、自力のプロモーションには限界があります。

壁③ 権利の「塩漬け」 Web連載プラットフォームの中には、契約時に包括的な海外配信権もプラットフォーム側が取得するケースが少なくありません。ところが運営側に全作品をローカライズする資金や人員の余裕はない。結果として「プラットフォームは海外展開しない。でも作者が個人で翻訳版を出すことも契約上できない」という、権利が塩漬けになった状態が発生しがちです。

ここで正直に書いておきたいことがあります。

壁①は、AIで殴れます。 翻訳と写植のコストが劇的に下がれば、個人の漫画家でも海外版を出す判断ができるようになる。ここは技術が効く領域。

壁②も、部分的には効きます。 言語の壁が下がれば届く範囲は広がる。ただし「見つけてもらう努力」そのものが消えるわけではありません。

そして壁③は、AIでは1ミリも解決しません。 これは契約と権利の問題であって技術の問題ではないからです。どれだけ翻訳が速く安くなっても、契約書に「できない」と書いてあれば、それはできないのです。

「AIで全部解決します!」とは、私には言えません。でも越えられる壁が確実にひとつあるなら、そこは越えていきたい。個人の漫画家が、コストを理由に海外を諦めなくていい時代は、もうすぐそこまで来ていると思っています。

⭐️AI漫画は次世代へ! 学園AIホラー漫画『YOUKAI』、Web4時代のアプリを実験公開開始! 2026年7月22日

https://aicu.ai/manga/youkai

6. 二次創作という、いちばん難しい話

最後に、まだ答えが出ていない話を一つ。

画像生成の登場前と後で、二次創作に対する世間の風向きが少し変わったと感じています。

従来、二次創作はファン活動の一環であり、同時にクリエイティブの登竜門でもありました。私自身、そういう文化に育てられた人間のひとりです。

ただ、あの文化が成立していた理由を考えると、ひとつ大きな前提があったように思います。

人間の手では、大元の完全なコピーはできない。

どれだけ似せて描いても、必ず個人の味が残る。だからこそ「別物」として成立していたし、原作者側も見逃してくれる余地があった。「完全には真似できない」という技術的な限界が、暗黙の防波堤になっていたわけです。

ところが画像生成による二次創作では、原本と見分けがつかないほど精密なものが作れてしまう。その瞬間、今まで曖昧なままで済んでいた「権利」という側面が、くっきりと輪郭を持って浮かび上がってきました。

AI漫画時代の二次創作には、おそらく新しい仕組みが必要なのだと思います。

ただ、その仕組みがどういう形なのか、正直まだ私にも分かりません。ここは描きながら、これからも考えていくつもりです。

https://note.com/aicu/n/n059b138e1c70

7. で、いま一緒にやっていること


いま開催中の「[YOUKAI × Anifusion] AI漫画フェスティバル」には、読者のみなさんが考えたYOUKAIを募集する部門があります。優れた提案は、本編に登場する可能性があります

これって、二次創作がグレーゾーンで生まれるのを待つのではなく、最初から表の扉を開けておくやり方なんですよね。読者が考えたキャラクターを、公式が正面から受け取って、作品の中に迎え入れる。

新しい仕組みと呼ぶにはまだ小さな実験かもしれません。でも、私が「必要かもしれない」と思っているもののひとつの形には、確かになっていると思うのです。

だから、ぜひ参加してほしい。

👹 AI漫画「YOUKAI」幻想図書館編 読者YOUKAI募集

次の舞台は「幻想図書館」。あなたが考えた「この世界にいてほしいYOUKAI」を募集しています。キャラクターデザイン3面図+能力がわかるイメージ画像でご応募ください。

前編で紹介したウニマジンXLもそうですが、YOUKAIは「元になったAIの機能を受け継ぐ」存在です。どんなAIから生まれ、その能力が人間のどんな弱さを暴くのか。そこまで考えてもらえたら、私は本当に嬉しいです。

https://aicu.ai/manga/youkai/ep/01#p4

✍️ Anifusion解説部門

Anifusionを使って「Anifusionを使いたくなる漫画」を描く部門です。中編で紹介したハマりどころも、漫画にしたら絶対に面白いと思います。

https://note.com/aicu/n/n27d33fc19102

📖 読切短編部門(最大16p)

フリースタイル部門。WebToon、4コマ、ページ漫画、なんでもOK。採用作品はAICUマガジンに掲載されます。

応募締切は2026年7月26日。 応募者全員に参加賞(1,000AICUポイント+Anifusion初月50%オフクーポン)が出ます。

エントリーはこちら → https://c.aicu.jp/2607

1年半前、私はアートバトルの会場で負けた側の人間で、その日のうちに勝った人のコミュニティの扉を叩いた側の人間でした。

そこから連載が始まって、ダメ出しをされ続けて、紙になって、棚に並んで、いま審査する側の席に座っています。何が起きるか分からないまま進むのが連載型だと書きましたが、人生の方もだいたいそうみたいです。

あなたの生み出したYOUKAIが、私のキャラクターたちとどんな化学反応を起こすのか。楽しみに待っています。

殻尾/殻Bee(@KARA_Beee

 



AI漫画「YOUKAI」原作:しらいはかせ(@o_ob)/作画・キャラクター原案:殻尾(@KARA_Beee) 連載を読む → https://j.aicu.ai/Youkai Anifusionを使ってみる → https://j.aicu.ai/Anifusion


殻尾さん、特別寄稿ありがとうございました!
「つくる人をつくる」AICUは、あなたの「はじめての1ページ」を全力で応援します。あなたの物語を、お待ちしています。


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Originally published at note.com/aicu on Jul 23, 2026.

AICU Japan

AICU Inc. AIDX Lab - Koto

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