世界最大のAI映画制作コンペティション「Project Odyssey Season 2」。世界中から何と 4,593 件を超えるエントリーがあり、合計190.4時間以上の作品が集まりました!(これは某有名動画生成AIが生成した動画の時間よりも長いと噂です!) AICUはこの名誉ある映画祭のブロンズスポンサーです。
今回は日本から挑戦したクリエイターへのインタビューをお届けします
AICUが選考!コミュニティ賞
まず世界中から集まったTop 50の佳作、そしてTop 25はファイナリストとして発表されています。各カテゴリーのTop 25が、最終審査に進みました。
https://www.projectodyssey.ai/season-2-award

日本からの上位作品とウォッチパーティ
AICUではProject Odyssey事務局より選出されたTop 50, Top 25の優秀作品リストをベースに、AICUで日本から参加していると思われる作品を紹介・評価するウォッチパーティを開催いたしました。
なお、日本語訳はAICU独自の参考翻訳であり、正確ではない可能性がございます(ご容赦ください)。
作品リストは好評発売中のアイキューマガジンVol.10に掲載されています。
https://note.com/aicu/n/nea129e2aa02b
STRAIN - 綻び by MASHTUNE_AI
コミュニティ賞として受賞した作品がいくつかあり、日本からはAICUとAIHubがプレゼンターをつとめています。
AIHub賞はMASHTUNE_AIさん制作【STRAIN - 綻び】でした。

【STRAIN】綻び
このビデオは、男性と女性の報われない愛の物語を女性の視点から語ります。このビデオは、スタジオで録音されたしっかりとしたボーカルと女性のつかの間のストーリーを交互に挿入することによって強化されています。
ストーリーパートでは逆光や光と影を使って女性の心理を描写し、スタジオパートでは口パクを巧みに使い映像に統一感を持たせています。
すべてのビデオとオーディオは完全に AI によって生成されています。
Connecting - 接続中
MASHTUNE_AIさんはもう1作【Connecting - 接続中】が最終選考に入選しています。

https://civitai.com/images/52550446
Connecting - 接続中
常に誰かとつながっていないと不安を感じる女性についてのミュージック ビデオを作りました。一見派手に見える人でも、みんな同じ悩みを抱えています。すべてのビデオは生成 AI を使用して作成されています。
画像生成:ImageFX
ビデオ生成:Kling_Ai モデル 1.6、モデル 1.5
音楽生成:SUNO v4.0
今回はこれらの入選・受賞を記念して、MASHTUNE:AI氏へのインタビューをお届けします。
AIが描く、実在する情景。医療系技術者から映像クリエイターへ、MASHTUNE:AIの世界

医療系技術者として働きながら、AIを駆使して映像作品を生み出すクリエイター、MASHTUNE:AI氏。彼の作品は、AI時代の映像クリエイターならではの表現と、細部へのこだわり、そして何より「実在感」への強い思いが込められています。国際コンペ「Project Odyssey」で入賞を果たした彼に、その制作秘話と今後の展望を伺いました。
「この人は実在しない、なんて言わせない」

― まずは自己紹介をお願いします。
「昼間は医療系の技術者として30年ほど働いています。映像制作は15年来の趣味で、After EffectsやPremiereを使って、結婚式や会社のイベント映像などを作ってきました。コンテストへの応募は今回が初めてです。」
― AIクリエイターになったきっかけは?
「2022年末、Stable Diffusionの画像を見て、『何これ?実写みたいなCGみたい』と衝撃を受けたのが最初です。翌年1月には、自分でAIグラビア写真集をKindleで出版しました。当時は情報も少なかったので、Pythonのインストールから、女の子の出し方まで、全部独学でしたね。」
― なぜオデッセイに応募されたのですか?
「AICUさんのX(旧Twitter)の投稿で知って、すぐに字幕をつけて応募しました。『綻び』ができた後だったので、『Connecting』も締め切りまでに作ってしまおうと。」
― 制作環境について教えてください。
「GTX2070で頑張ってます。今回の賞金でアップグレードしたいなと思っています。」
「日本人にしかわからない、かもしれないけれど」
― 「STRAIN - 綻び」の制作でこだわった点は?
「まず、『ファーストテイク』風の演出ですね。日本人はわかるけど、国際コンペではどうかな、と。スタジオパートと背景パートを切り分けて、メリハリをつけたかったんです。口パクは、Klingのリップシンク機能を使いましたが、完璧じゃない。フレームレートを調整したり、スローモーションにしたり、色々工夫しました。」

「静止画生成はストーリーパートでStable Diffusionを使用し1500枚ほど生成。それをピックアップし動画化へ。動画生成は、Klingが99%、Hailuo Minimaxが1%(涙のシーンなど)。スタジオパートの静止画生成はImageFXで500枚ほど生成。ImageFXは同じような女の子が出やすいので、Kindleで培った技術で(笑)、個性を出すように調整しました。 当時はリファレンス機能が無かったので、キャラクターの一貫性を保つのが大変でした。」

― プロンプトの工夫はありますか?
「歌うシーンでは、『静かに歌う』と入れると、自然な動きになるんです。『情熱的に歌う』だと激しすぎるし、何も入れないと口パクだけになってしまう。手の演技も入れたかったので。」

曲が先、映像は後。
― 「Connecting」についてはいかがですか?
「これも曲が先行です。JerseyClub Beat、あのイントロのビートを出したくて、この動画を作った感じです。実は、『午前3時のエゴサ』という、エピソードゼロ的な作品もあるんですよ。」
― 足音へのこだわりも印象的でした。
「部屋に入ってきた感じを演出したかったんです。爆音がかかっている部屋に、裏道から入ってくる感じを。」

「評価されることが、今は嬉しい」
― ファンとの交流はありますか?
「YouTubeのコメントで、『次の動画待ってます』という声を聞くと、やってきてよかったな、と。収益よりも、評価されることが嬉しいですね。」
― 今後の展望を教えてください。
「コンテストには引き続き参加したいと思っています。でも、流行りに乗るのではなく、自分の作りたい楽曲、表現を追求したい。5年後、10年後にも、『AIが出た頃に、こんな作品があったんだ』と言われるようなものを作りたいですね。」
AIとクリエイターの「共創」
― AI生成に対する考え方をお聞かせください。
「よく『この人は実在しない人物です』という表現を見かけますが、私は違うと思う。クリエイターがAI生成のボタンを押した瞬間に、その人は存在する。PCの中でも、映像の中でも。それは、AIクリエイターに対する、ある種の失礼にあたるんじゃないかと。『実在』はしないけど『存在』はしているんです」
― コミュニティへのメッセージはありますか?
「技術はどんどん共有していきたいですね。真似してもらってもいい。それが、AI生成の活性化につながるなら。」
― 今後、連載をお願いする可能性もありますが…?
「よければ、いつでもお使いください!お金よりも大事なものがあると思っていますので。」
https://www.youtube.com/@mashtuneai
編集部メモ
インタビューを通して、MASHTUNE:AI氏のAIとクリエイションに対する熱い思いが伝わってきた。「この人は実在しない」という言葉に抗い、AIが生み出すキャラクターに命を吹き込む。彼の作品は、AIと人間が「共創」する未来を、鮮やかに描き出している。
医療関係者から世界に認められたクリエイター。作品のポップさに見え隠れするクリエイティブAI時代の才能と、真剣さ、コミュニティへの貢献に、深みを感じていただければ幸いです。
次回は「リソウノミライエン」他2作で受賞した中島さんの対談をお届けします。
⭐︎本稿はアイキューマガジンVol.10に収録されています⭐︎
Originally published at https://note.com on Mar 23, 2025.
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