【AICUはるフェス2026 Day1 セッションレポート③】「手で書いた方が早いかも、でもね」——AI漫画のリアルなワークフロー

【AICUはるフェス2026 Day1 セッションレポート③】「手で書いた方が早いかも、でもね」——AI漫画のリアルなワークフロー

AICUはるフェス2026 Day1セッションレポート
「現役プロ漫画家・ハッシー橋本が訊く!! 生成AI漫画ってどうなのよ?」
Crypto Lounge GOXの会場からAICU media ライターのEMKOがお送りします。

 https://www.aicu.jp/post/260319 

実際のワークフロー——1コマを完成させるまで

AICUはるフェスのモニターが並ぶ中で熱いトークが行われました。AI漫画の制作現場を知らない現役プロ漫画家・ハッシー橋本さん(X@hassytoushi)からの「AI漫画ってどうやって作るんですか?」という問いに、AICUで「YOUKAI」を連載する殻尾さん(X@KARA_Beee)が解説した手順はこうです。

  1. ChatGPTに依頼してプロンプトを作成する 「こういうシーンの画像を作りたいから、プロンプトを書いて」と伝えると、画像生成AIに適した形の呪文(プロンプト)を提案してくれます。
  2. Stable Diffusionなどの画像生成ツールに入力する 英語のプロンプトを入力し、画像を生成。環境によっては1〜2秒で1枚が出てきます。
  3. LoRAで方向性を絞り込む キャラクターの一貫性を出すためのLoRAを組み合わせ、ブレを抑えます。
  4. キャラクターごとにレイヤーで管理する 背景レイヤー、キャラクターレイヤーを分けて構成。デジタル作画と考え方は同じですが、AIで出力した画像は「レイヤーが結合された状態」で来るため、そこからさらに分解・加工が必要です。
  5. 手書きで補正を加える かすれ、スピード線、ふきだしのレイアウト、擬音文字などは手書きで対応。「ここだけは手で書かないといけない」という部分が必ず残ります。
  6. セリフ・文字はフリーハンドで入れる 文字の配置と「書き文字感」は、AIがもっとも苦手な領域のひとつ。あえて手書きにすることで、AI感を消すことができます。

AI漫画制作ツールについて:
ブラウザだけでAI漫画が作れる「AniFusion」がサービスイン|AICU
2大AI漫画制作ツールの開発者が公開!次世代漫画の世界と可能性|AICU

https://note.com/aicu/n/ndddd86cfdac9

「手で描いた方が速いかも」——正直な感想

ここで、しらいはかせから印象的な言葉が出ました。

しらいはかせ:
「これ、正直手で描いた方が速いかもしれないです。でもそれはそれで意味がある。AI特有のノイズや、予期しない造形をあえて取り込んで、それを妖怪デザインに活かしたりしている」

学園ホラー漫画「YOUKAI」(13)『フォームチェンジ』より
AI生成画像をベースにした白黒原稿。手書きの書き文字や効果線が加えられている

たとえば「YOUKAI」では、AI生成時に発生した不規則な形や不気味な輪郭を、意図的にキャラクターデザインに取り込んだケースがあるといいます。「プロンプトで指示した覚えがないのに、なぜか可愛いものが出てきた」という体験が、新しい創作の出発点になることもあります。
AIが生んだ偶然の産物を「妖怪っぽくていいね、これ使おう」と拾い上げる。それがこの作品の創作スタイルです。
また、福本伸行作品『賭博黙示録カイジ』の「押せっ」という書き文字の演出(コピーを繰り返してノイズを出す技法)と、AI生成のノイズを重ねて不気味さを表現するアプローチが、同じ発想の延長線上にあるという話も飛び出しました。偶然を意図に変える。それがAI漫画ならではの創作の醍醐味です。

https://note.com/aicu/m/m9f433595f57e

現実では撮れないものが作れる——雨の反射とAI

AI漫画のもうひとつの強みとして、「現実世界では撮影できないもの」を素材として作れる点が挙がりました。
たとえば雨のシーン。路面に反射する雨粒や水たまりの映り込みは、写真で撮ろうとしても狙った構図で撮るのが非常に難しい。しかしAIであれば「雨の降る夜の交差点、水たまりにネオンが反射している」といったプロンプトで、参考画像を生成できます。

NanoBanana2で生成した「雨の渋谷」

しらいはかせ:
「その画像をそのまま使うんじゃなくて、トレースの下敷きにする。雨の反射の形とか、光の散り方とか、自分で想像するよりもリアルな参考資料が手に入る」

これは漫画家にとって実用的な学びです。現実に存在するけれど撮影が難しい現象を、AIで「参考画像として」生成し、そこから線を起こす。従来の写真トレースの発展形として、AIが「見えないものを見せてくれる道具」になりうるという視点でした。

3Dモデルとの連携——前・横・後ろから生成する

さらに発展した技術として、Google製の画像生成AI「Nano Banana」(Gemini 2.5 Flash Image)を使って「三面図(前・横・後ろ)から任意のポーズの画像を生成する」という手法も紹介されました。
キャラクターの前面・側面・背面の3枚の画像を用意して入力し、「このポーズにして」と日本語で指示すると、そのポーズのキャラクター画像が出てくる。コマに合わせてキャラクターを動かすための「素体」を、AIが代わりに作ってくれるイメージです。

 https://www.aicu.jp/post/260227 

初公開!Elena Bloomの設計仕様書。NanoBanana2のリファレンス画像となります。

しらいはかせ:
「1から作ると1日かかるけど、三面図を一度作っておけば、あとはくるっとやるだけという効率化が生まれています。ただし3D的に破綻していても「漫画的には通る」という場合もあり、どこまで許容するかは作家の判断に委ねられています。」

Scaniverseで3Dスキャンした建物データをAIに読み込ませ、綺麗な建物の絵として出力した例。立体データがベースなので、任意の角度から描き起こせる漫画向きの素材になる

プロ漫画家の視点——「作画時間、変わってないかも」

ここで、ハッシー橋本さんが鋭い指摘を入れました。

ハッシー橋本さん:
「作画時間って、締め切りドリブンで考えると変わってないんじゃないですか?上手い人ほど、できることが増えるから結局描き込んでしまうし」

これには殻尾さんも同意しつつ、「アシスタント2人分の仕事を1人でカバーできるという意味での効率化はある」と補足。作画だけでなく、シナリオ・レイアウト・翻訳など複数のタスクに一人で対応できる幅が広がっている、という整理になりました。

次回予告

記事④では、「表には言えない」業界の空気から、プロ3人が語る「ツールとしてのAI」の未来像に迫ります。そしてAIクリエイターのメンタルヘルスについても踏み込んでいきます。


登壇:ハッシー橋本 / 殻尾(からびー)/ しらいはかせ
#AICU春フェス2026 #AI漫画 #生成AI #漫画家

Originally published at note.com/aicu on Mar 20, 2026.

AICU Japan

AICU Inc. AIDX Lab - Koto

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