2025年8月8日(日本時間早朝)、OpenAIは待望の次世代AIモデル「GPT-5」を発表しました。CEOのサム・アルトマン氏をはじめとする主要メンバーが登壇し、その驚異的な性能と、AIの未来を塗り替える数々の新機能を披露しました。
本レポートでは、この歴史的な発表会の内容を、デモンストレーションや技術解説をサムアルトマン自身のツイートを含めて詳細にお届けします。
going to try live-tweeting the GPT-5 livestream.
— Sam Altman (@sama) August 7, 2025
first, GPT-5 in an integrated model, meaning no more model switcher and it decides when it needs to think harder or not.
it is very smart, intuitive, and fast.
it is available to everyone, including the free tier, w/reasoning!
イントロダクション:AIは「博士レベルの専門家」へ
発表の冒頭、サム・アルトマンCEOはChatGPTが現在7億人のユーザーに使われていることに触れ、その進化のマイルストーンとしてGPT-5を位置付けました。
「GPT-3は優秀な高校生のようでした。時折才能を見せるものの、未熟さも目立ちました。GPT-4は大学生レベルの知性と実用性を備えていました。しかし、GPT-5は、あらゆる分野でオンデマンドに呼び出せる正真正銘の博士号レベル(PhD-level)の専門家です」
アルトマン氏は、GPT-5が単に質問に答えるだけでなく、「ソフトウェア・オンデマンド」という新時代を切り拓くと宣言。プログラミング、イベント企画、ヘルスケアの意思決定など、ユーザーの目標達成のために能動的にタスクを実行する能力を持つと強調しました。
そして最も大きなサプライズとして、この最高性能のモデルが初めて無料ユーザーにも提供されることが発表されました。
今日から無料、プラス、プロ、チームユーザー向けに展開。来週はエンタープライズと教育向けに。 無料プランでこれを提供することは私たちにとって大きな意味があります。誰もが博士レベルの知能を利用できます! プラスユーザーははるかに高い制限枠を得ます。 プロユーザーはGPT-5プロを利用できます。本当に賢い!
GPT-5の技術的進化:思考力と信頼性の飛躍的向上
自動化された「思考(Reasoning)」
これまでのモデルでは、高速な応答を返す標準モデルと、時間をかけて深く思考する高性能な「Reasoningモデル」をユーザーが選択する必要がありました。
チーフ・リサーチ・オフィサーのマーク・チェン氏によると、GPT-5はこの選択を不要にします。タスクの複雑さに応じて、モデルが自動的に最適な「思考時間」を判断し、常に最高のパフォーマンスを発揮します。ユーザーは「しっかり考えて」と指示することもできますが、基本的にはAIが自律的に判断するため、シームレスな体験が可能です。
ベンチマーク性能
ポストトレーニングチームを率いるマックス・シュワルツァー氏が、各種ベンチマークにおけるGPT-5の圧倒的な性能を解説しました。
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コーディング: 実際のソフトウェア開発タスクを評価するSWEBenchで新記録を樹立。
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多言語実装: Ada Polyglotで高いスコアを記録し、多様なプログラミング言語での複雑な機能実装能力を証明。
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マルチモーダル推論: MMLU (Massive Multitask Language Understanding) では、ほとんどの人間の専門家を上回るスコアを達成。
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数学的能力: 米国数学オリンピック予選レベルの数学コンテストAIME 2025で、従来モデルを大幅に超える成績を記録。
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信頼性: 最も注力されたのがファクチュアリティー(事実性)の向上です。ハルシネーションを劇的に削減し、複雑な質問に対してもOpenAI史上最も信頼性の高いモデルとなっています。
評価が最も重要なものではありません――最も重要なのは、モデルがどれほど有用だと私たちが考えるかです――しかし、評価でも良い結果を出しています。例えば、SWE-benchや他の多くの指標で新たな高記録を達成しています。 これまでで最も信頼性が高く、事実に基づいたモデルです。
evals aren't the most important thing--the most important thing is how useful we think the model will be--but it does well on evals. for example, a new high on SWE-bench and many other metrics.
— Sam Altman (@sama) August 7, 2025
it is by far our most reliable and factual model ever. pic.twitter.com/reFhrKJCpn
GPT-5の驚異的な能力:ライブデモハイライト
発表会では、GPT-5の能力を具体的に示すライブデモが複数行われました。
モデルが5分でファイナンスダッシュボードを作成、これは開発者が何時間もかかると見積もっていたもの:
model creates a finance dashboard in 5 minutes that devs estimate would have taken many hours: pic.twitter.com/xnt29htcVE
— Sam Altman (@sama) August 7, 2025
1. 学習と視覚化:インタラクティブな物理デモ
中学生の物理の宿題を手伝うというシナリオで、「ベルヌーイの定理」について質問。GPT-5は即座に高品質な回答を生成しました。さらに、「この原理を動くSVGデモで説明して」と依頼すると、GPT-5は数分で400行以上のコードを記述し、翼の周りの空気の流れや揚力の変化をインタラクティブに操作できる美しいデモをCanvasツール上で作成しました。難解な科学的概念を瞬時に視覚化し、学習をより楽しく、直感的にします。
2. コーディング:「Vibe Coding」の進化
「パートナーがフランス語を学べるWebアプリを作って」という曖昧な指示から、GPT-5は美しいデザインのインタラクティブな学習アプリを自動生成しました。フラッシュカード、クイズ機能に加え、「ネズミがチーズを食べる」というフランス風にアレンジされたスネークゲームまで実装。ゲーム内でチーズを食べるたびに、新しいフランス語単語が音声で再生されるという教育的な工夫も凝らされていました。
3. クリエイティブ・ライティング:心に響く文章作成
「旧モデルへの感謝と希望を込めた送別の辞」というテーマで文章を作成。GPT-4.0の生成した文章がやや定型的だったのに対し、GPT-5は「友人、同僚、そして常連になってくれた好奇心旺盛な見知らぬ人たちへ」と始め、より人間味と詩的なリズムに溢れた、心に響く文章を生成。AIが書いたとは思えない、高いIQとEQを感じさせるライティング能力を披露しました。
ChatGPTのパーソナライズと機能拡張
GPT-5の発表に伴い、ChatGPT本体も大幅に進化します。
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音声機能の強化: より自然な会話が可能になり、ビデオ入力にも対応。無料ユーザーでも長時間の会話が可能になり、有料ユーザーはほぼ無制限に利用できます。さらに、回答の長さを「一言で」のように細かく指示できるようになりました。
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パーソナライズ: チャット画面の配色カスタマイズや、「皮肉屋」「プロフェッショナル」など、ChatGPTの性格(Personality)を設定できる機能がリサーチプレビューとして登場。
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Gmail・Googleカレンダー連携: Proユーザーから順次、GmailとGoogleカレンダーへのアクセスが可能になります。デモでは「明日の予定を計画して」と指示するだけで、カレンダーの予定を整理し、未返信のメールを指摘、さらには出張のためのパッキングリストまで自動で作成しました。
開発者向けアップデート:APIとツールの進化
プレジデントのグレッグ・ブロックマン氏と研究チームが、開発者向けの強力なアップデートを発表しました。
新しいAPIモデルと価格設定
3つの新しいモデルがAPIで利用可能になります。
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GPT-5: 最高性能モデル。価格は入力10/1Mトークン、出力10/1Mトークン。
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GPT-5 Mini: GPT-4oを多くの点で凌駕する、高速かつ高性能な小型モデル。
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GPT-5 Nano: 最速・最軽量モデル。
新たにReasoning Effort(思考努力量)というパラメータが追加され、「minimal(最小)」設定を使えば、高性能モデルを低遅延アプリケーションにも組み込めます。
これらのモデルは本当にコーディングが得意です! APIに3つの新しいモデル: GPT-5 GPT-5 mini GPT-5 nano 新しい「最小限」の推論モード、カスタムツール、構造化出力の変更、ツール呼び出しの前文、詳細度パラメータ、そしてさらに多くの機能が追加予定です。
these models are really good at coding!
— Sam Altman (@sama) August 7, 2025
3 new models in the API:
GPT-5
GPT-5 mini
GPT-5 nano
new 'minimal' reasoning mode, custom tools, changes to structured outputs, tool call preambles, verbosity parameter, and more coming. pic.twitter.com/Vrc1WmZKza
新機能
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Custom Tools: これまでのJSON形式だけでなく、フリーフォームのプレーンテキストでツール出力を扱えるようになり、長大なコード引数などを渡しやすくなります。
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Preambles: モデルが実行しようとしている内容を事前に説明する機能。
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Verbosity Parameter: low, medium, highで応答の冗長性を制御できます。
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コンテキスト長: 400kトークンに倍増。
コーディングにおける圧倒的実力
開発ツール「Cursor」との連携デモでは、GPT-5が自律的にGitHubリポジトリのIssueを読み解き、コードベースを検索し、バグを特定・修正する様子が披露されました。これは単なるコード生成(Vibe Coding)を超え、自律性と対話能力を兼ね備えた真のペアプログラマーの誕生を予感させます。
社会実装:ヘルスケアとエンタープライズでの活用
発表会では、3つのがんと診断されたカロリーナ氏とその夫フェリペ氏が登壇。彼女は、難解な医療レポートをChatGPTで翻訳・要約することで自身の病状を理解し、医師との対話に主体的に参加できた経験を語りました。GPT-5はこの分野でさらに進化し、患者が自身のヘルスケアジャーニーをより主体的に歩むための強力な「思考パートナー」になると期待されています。
エンタープライズでの導入
プラットフォーム責任者のオリヴィエ・ゴデメント氏によると、すでに500万社の企業がOpenAIの技術を利用しています。
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Amgen (製薬): 創薬プロセスにおける科学文献や臨床データの分析でGPT-5を活用。
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BBVA (金融): 財務分析において、アナリストが3週間かけていた作業を数分で完了。
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米連邦政府: 200万人の連邦職員がGPT-5を利用可能になり、行政サービスの向上に貢献。
結論:AGIへの確かな一歩
チーフサイエンティストのヤクブ・パチョッキ氏は、GPT-5が「我々が信じる新しいアイデアの初期の垣間見に過ぎない」と述べ、AIが新たな知識を発見し、人類の生活をより良く変革する未来への期待を語りました。
GPT-5の登場は、AIが単なるツールから、あらゆる人々のポケットに入る「博士レベルの専門家」へと進化する、歴史的な転換点となるでしょう。その可能性は無限大であり、これから世界中の人々がこの技術を使って何を創造するのか、目が離せません。🚀
動画アーカイブはこちらから!
Sam Altman, Greg Brockman, Sebastien Bubeck, Mark Chen, Yann Dubois, Brian Fioca, Adi Ganesh, Oliver Godement, Saachi Jain, Christina Kaplan, Christina Kim, Elaine Ya Le, Felipe Millon, Michelle Pokrass, Jakub Pachocki, Max Schwarzer, Rennie Song, Ruochen Wang introduce and demo GPT-5.
Originally published at note.com/aicu on Aug 7, 2025.
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