世界で活躍したいアニメクリエイティブに携わる方々を東京都が応援する「Tokyo Anime Business Accelerator事業」をご存知ですか?1960年から開催されているフランス・アヌシー国際アニメーション映画祭・MIFAから、「つくる人をつくる」AICUが活動の様子をお届けします。

世界で活躍したいアニメクリエイティブに携わる方々を、東京都が支援します!東京には、独自性があり質の高いアニメーションを制作する制作会社等が多数活躍しています。しかし、その多くは海外における知名度が高くないのが現状です。東京都は、海外においてまだあまり知られていない東京のアニメーション制作会社等の海外展開を促進し、アニメーション産業の振興を図るため、Tokyo Anime Business Accelerator 事業を実施します。都内アニメーション制作会社等の積極的なご参加をお待ちしています!
MIFAとは
MIFA(Marché international du film d'animation)とはフランス・ アヌシー国際アニメーション映画祭に併催する世界最大規模のアニメーション見本市です。世界各国・地域のアニメ・ビジネス関係者が参加し、作品売買、対内外投資、共同製作等様々なアニメーションビジネスの機会を創出しています。主催者側の発表によると、2024年のブース出展社数は1,100社、MIFA参加者数は世界103ヵ国・地域から約6,500名となり、年々増加しています。
TOKYO PITCH
MIFAのメイン会場であるインペリアルパレス。東京都は2025年6月10日~13日の開催期間中に大きなブースを持ち、6月10日にピッチセッション「TOKYO PITCH」を開催しました。


風早完次(かざはや かんじ)さんです。英語・フランス語が堪能で、TOKYO PITCHのサポートと司会進行を担当されておりました。

風早 完次
グイダ合同会社 プロデューサー / カルチャーコネクト代表
株式会社Culture Connectの創業者で代表取締役。Culture Connectは、日本のIPを国際展開、海外向けライセンスを国内外のパートナーと推進。また、映像産業振興機構(VIPO)のアドバイザーとして、日本のアニメーション企画の海外ピッチをAsian Animation Summit/ATFxTTBにてサポート。Culture Connect創業前は、東映アニメーション(株)において海外ライセンス責任者を務めた。グイダ合同会社プロデューサーでもある。
東京都の根岸太(ねぎし ふとし)さんです

今年、東京都のMIFAへの参加は10周年という、記念すべき節目を迎えます。この長年にわたり、東京都は活気あふれるアニメーション業界を力強く推進してまいりました。クリエイターを勇気づけ、スタジオを支援し、東京をアニメーションのダイナミックな世界的拠点として着実に成長させてきたのです。
今年このプログラムに選ばれた作品は、東京のアニメーション業界が持つ才能の、創造性の幅広さを見事に示しています。縦型ショートアニメーション、子ども向けの奇想天外な2Dシリーズ、特撮のエッセンスが炸裂するCG長編映画、ジブリ作品を彷彿とさせる優雅な寓話、さらには実写、2D、3DにAIロトスコープ技術を融合させたアニメーションドキュメンタリーまで、多岐にわたります。
それでは風早さんの進行と公式情報に基づき、各作品のピッチの様子を紹介していきたいと思います。
⭐︎本レポートの資料は公開されたもの、および制作各位の許諾確認を得られた素材のみを使用しています。
関 厚人「Cryptid Chaos」
まずは、衝撃的な作品で幕開けです。個人クリエイターの関さんが、縦型ショートアニメーション『Cryptid Chaos』(クリプティッド カオス)を発表しました。このプロジェクトは、Tokyo Pitch Grand Prixで見事グランプリを受賞しました。

https://atsuhito-works.format.com/
あらすじ
未確認生物やミステリーハンターたちが集まるシェアハウス「CRYPTID HOUSE」。魔女や雪男、さらにはエイリアンに寄生されたクマなど、個性豊かな住人たちがにぎやかに暮らしている。そこに暮らすのは、天狗に育てられた主人公の少年・キタリ。オカルトと日常が入り混じるこのシェアハウスで、今日も予測不能なドタバタライフが繰り広げられる...!?
作品に込めた思い
オカルトや未確認生物は、長年アニメや漫画、映画のテーマとして愛されてきました。私も幼少期から多くのオカルト作品に触れ、それが創作の礎となっています。本作を通じて、子供たちがオカルトに興味を持ち、創造力や探究心を育むきっかけになれば嬉しいです。また、人間と未確認生物が暮らすシェアハウスの物語を通じて、多様性や個性を尊重する大切さを、自然に感じ取ってもらえたら嬉しいです。
クレジット
企画・デザイン・ディレクション:関 厚人
コンセプトアーティスト / ディレクター
アニメーションやゲームを中心にビジュアル制作を行うコンセプトアーティスト。2009年から2024年までカナバングラフィックスに所属し、『ウサビッチ』『イナズマデリバリー』などに携わる。また、アートディレクターとしてキャラクターデザインなども多数手がける。2024年よりフリーランスとして活動。幅広いスタイルに対応しながらも、ポップでカラフルなデザインを強みとする。 https://atsuhito-works.format.com/
『Cryptid Chaos』は、オカルトを恐怖の対象としてではなく、奇想天外なイマジネーションへの出発点として再構築しています。勇気ある者にとってはスリル満点の体験であり、廊下の影を思わず二度見してしまうような人々にとっては、好奇心をそそる招待状です。勇気を出してドアを開けてみてください…その向こうに、あなたの次なる「沼」が潜んでいるかもしれません。
S.o.K『Kitten Head/にゃんコあたま』
続きまして、S.o.K.から、魅力的なお二人、田中彰悟(たなかしょうご)さんと西澤宏二(にしざわこうじ)さんをお迎えします。プロジェクトは、心温まる風変わりな作品『Kitten Head/にゃんコあたま』です。
『Kitten Head』は、アイデンティティと想像力を心温まるタッチで探求する作品です。


あらすじ
頭が猫の主人公とその友人たちの日常の冒険を描く物語
日本のどこかにある「ねこじゃら市」
人間と同じように、猫にも暮らしやすい町
なぜなら、この町の子どもたちの頭には、猫がくっついているからです
大人になる頃には、いつの間にかいなくなってしまう「自分猫」
子どもたちは、束の間にしかいない「自分猫」との生活を楽しんでいます
主人公のエミルはなんにでも興味を持つ、だけど、ちょっとぼんやりした男の子
その頭には気まぐれでやんちゃなネコのにゃー太がくっついていて、
子どもたちは頭の猫と遊んだり、仲良くしたり、喧嘩したり……。
そんな彼らが織りなすハートフルでドタバタなにゃんコあたまコメディ
作品に込めた思い
「にゃんコあたま」は子どもたちが頭の猫「自分猫」との交流を通して、自分や他者の内面に触れるファンタジー要素にあふれた作品です。自分なのに、自分でも制御できない「自分猫」。時には喧嘩しながらも「自分猫」の存在を認め交流することは、自分自身を認めることにもつながります。
本作を通じて「自分を好きになるって素敵なこと」だということを子どもたちに感じてもらうきっかけになればと考えています。
監督:益山 亮司
キャラクターデザイン:Alex Nova
シリーズ構成/脚本:益山 貴司
プロデューサー:西澤 宏二
制作:S.o.K
合同会社S.o.K: 枠にとらわれない独自の視点と技術を持つアニメーション制作会社です。創造的な閃きで強烈なエネルギーを生み出し、視聴者の心に深い感動と驚きをもたらすことに情熱を注ぎ、世界に名を馳せるクリエイティブ集団を目指しています。 https://sok-llc.com/
\MIFA2025いよいよ開幕🎉/
— S.o.K(エスオーケー) (@SoK_llc) June 10, 2025
ブースの準備もばっちりです✨
弊社は本日現地時間17:15頃、『にゃんコあたま』のピッチを行います!
MIFA2025 has officially begun🎉
Our pitch for "Kitten head" is scheduled for today around 17:15 local time!
Wish us luck!#MIFA2025 #SoK #KittenHead pic.twitter.com/HGpTPvGknn
https://programme.annecyfestival.com/oeuvres/e3b44bfb-89f4-439a-a020-29e2069ee2cd
紺吉有限会社「烈火」
さて、ここからは長編映画に移ります。まずは紺吉有限会社『REKKA(烈火)』。3Dとアニメスタイルの2Dが見事に融合した、フルCG作品です。株式会社KON-YOSHIの瀧澤大祐(たきざわ だいすけ)さんです。

大震災で家族を失った若き古代文明研究家「アラタ」は、その絶望の最中に目にした「鬼の巨神:スサノオ」を追っていた。調査の末、スサノオはある組織によって蘇り、大震災を起こした事実を知る。そして、スサノオに対抗する唯一の存在、「龍の巨神:烈火」がいることも突き止めた。烈火の伝説が残る神社を訪れたアラタは、巫女の「ケイ」と出会う。奥之院の洞窟には、現代の地で戦う烈火とスサノオの姿が描かれていた。そこには、魂の波動を捧げ、烈火を呼び起こす儀式も刻まれていた。スサノオの完全復活は、そこまで迫っている。二人は、烈火を呼び覚ますことができるのか。そして、人類の未来に希望の光を灯すことはできるのか。

作品に込めた思い:
日本神話の「素戔嗚尊 対 八岐大蛇」。この話が暗示するのは、稲作を生業とする新勢力と、自然を尊び狩猟採集を生業とする古い勢力の戦い、つまり「文明の間(はざま)の戦い」だ。そこには、善も悪もない。希望の光を求める同士の戦いだ。この「文明の間の戦い」が、遥か古代から繰り返し、ムー大陸もアトランティス大陸も、巨神の戦いの結末で滅亡したのだとしたら?
現代で、絶望の中で灯る、人類の希望の光を描きたい。

クレジット
原案:板野一郎
総監督:小中和哉
監督:阿尾直樹
巨神デザイン・演出:武藤聖馬
プロデュース:紺吉有限会社
\公式Xアカウントできました/
— REKKA(烈火)公式 (@pjt_rekka) May 10, 2025
オリジナルアニメ企画『REKKA(烈火)』公式Xアカウントでは進行中のプロジェクトについて発信していきます!
原案の板野さん、巨神デザインの武藤さんからメッセージとサインも到着!フォローをよろしくお願いします!#アニメ烈火#板野一郎#武藤聖馬 pic.twitter.com/LqcT609ziK
紺吉有限会社
織物の街、新潟県十日町市にて、50年以上前に創業。
2021年より、CG映像スタジオとして事業を開始。
2023年には、元請制作を行なった『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』が全国公開。
映像創作顧問・板野一郎と共に、日本で培われてきたアニメ演出を最新のツールでアップデートしながら、劇場作品は元より、ゲーム映像・CM・MV等、幅広い作品の制作を行なっている。 https://www.kon-yoshi.co.jp/
国宝の火焔型土器をモチーフとした「巨神」が戦うオリジナル長編アニメーション映画「烈火」。公開は2029年を予定。制作陣には機動戦士ガンダムや伝説巨神イデオンなどの原画に参加した日本を代表するアニメーターの板野一郎さん、さらに平成ウルトラマンシリーズを手掛けてきた小中和哉さんが総監督となり、特撮の要素も取り入れた新ジャンルのアニメを目指すということです。
株式会社テトラ『TAO – The Way to Harmony』
続いては株式会社テトラ 幸積彩(こうづみあや)さんによる『TAO – The Way to Harmony/大きな森のタオ』の紹介です。

あらすじ
かつてタオは、すべての命が寄り添う理想郷──
王の願いでガラス玉に封じられた森で、穏やかに暮らしていた。
だがある日、その森から放たれ、力が正義とされる帝国へと落ちていく。
恐れが秩序を装い、信じる心が忘れられた世界で、タオは封印された仲間たちを救うため、旅に出る。
道中で出会う痛みや孤独に寄り添いながら、「誰ひとり見捨てたくない」という想いが芽生えていく。
寄り添うのは──ぽってり、ツンデレ、タオ命の相棒ルーヴァ。
むぎゅっと寄り添うその存在が、タオの心に“信じる力”と“命のぬくもり”をつなぎ続けてくれる。
最も小さく、最も無力な存在が、分断された世界を、静かにつなぎなおしていく──その旅路が問いかける。本当の強さとは、勝つこと?それとも、信じ抜くこと?

作品に込めた思い
かわいい小人と動物たちが繰り広げる冒険ファンタジーです。
日本独自の作画による2Dアニメと3D技術を組み合わせ、温かみのある新たな映像表現を追求しています。
平和な暮らしを送ってきたタオが、人間が作り出した理不尽な世界に直面する姿を描きます。
ご覧いただく皆様には、物語を通して現代社会が抱える問題に気づき、タオの底抜けに前向きな姿に共感し、希望を感じ取っていただけることを目指します。


原作・脚本・監督:谷口 充大
脚本協力:フルタ ジュン、オニ・ペチーノ
プロデュース:幸積 彩、原田 英聡
コンセプトアーティスト:阿部 菫
モデリング:金野 皓
制作進行:島村 隆誠
制作:TETRA

たにぐちみつひろ監督も MIFAに参加中
『大きな森のタオ』この作品を持ってアヌシーMIFAに出展いたします!
— たにぐちみつひろ (@TETRA_Taniguchi) June 7, 2025
興味ある方いっしゃいましたらぜひDMください!
We'll be showcasing our project TAO at Annecy MIFA!
If you're interested, feel free to send us a DM!
📍Booth: C.31 | 📆June 10–13#MIFA2025 #AnnecyFestival pic.twitter.com/DQDTlai9Nx
株式会社テトラ
2007年8月設立のCGコンテンツ・アニメーションスタジオ。
実写合成・フルCG・ゲーム・アニメなど、多彩な映像制作を展開。アーティストとエンジニアが連携し、独自技術を駆使した制作体制を整え、モーションキャプチャスタジオや技術開発を進めています。2024年秋にはオリジナル企画開発チームを立ち上げ、日本の2Dアニメと自社開発の3DCGを融合した唯一無二の映像美で新たな体験を創出します。 https://tetra-inc.com/
合同会社ズーパーズース『The Taste of Water/水の味』
ショーケースの最後を飾るのは、日本酒といういきいきとしたテーマを、大胆かつ創造的なアプローチで描き出した長編アニメーションドキュメンタリーです。合同会社ズーパーズースの大神田リキ(おおかんだ りき)さんと、中島良(なかじま りょう)さん、作品は『The Taste of Water/水の味』。
An Animated Documentary about SAKE
— The Taste of Water (@supersub_mocap) June 7, 2025
The Taste of Water
Feature film (100 min) / Completion: June 2026https://t.co/tzDWAN6jY2
日本酒を描いたアニメーティッド・ドキュメンタリー
「テイスト オブ ウォーター 水の味」
100分 26年6月完成予定#Sake #Culinary #indie_anime #Japan pic.twitter.com/hHukZwZrc3
あらすじ
日本酒をめぐる「水の味」を探して漫画家のオオカドと酒酵母の精霊コボくんが日本各地を旅する。
酒造り体験から歴史探訪、自然との共生、酒の危機、そして海外の酒蔵まで、多角的な視点で、2人は奥深い日本酒の世界を知る。
「水の味」という言葉の奥にあるのは、“人と人、そして人と自然・歴史・文化を結びつける深い絆”。日本酒は、まさに“水の味”に象徴されるような、多面的でありながら同時にシンプルな“心のつながり”を生み出す存在である。娯楽性と教育性が融合した大人向けのアニメイティッド・ドキュメンタリーとして、まだ日本酒の魅力を知らない世界中の人々に向けた感動のロードムービー。
作品に込めた思い(監督 大神田リキ)
アメリカ生まれの私が日本で暮らし25年。私が実感した日本の伝統文化とは、小さなことを大切にすること。季節や天候、味わいを五感で感じ、それを他者と共有することで特別なものにする、ということです。
各地の酒蔵に息づく歴史や職人の技、自然への感謝が込められた一杯の酒。
日本酒は単なる飲み物ではなく、文化そのものを感じる体験なのです。
それこそが「水の味」の本当の意味であり、日本酒の深さです。

AIロトスコープという新しい手法を使って食文化ドキュメンタリーアニメーションを開発しています。

https://corp.aicu.ai/ja/projectodyssey-20250417



https://taste-of-water.super.site/
合同会社ズーパーズース
映画監督の中島良が2020年に設立した映像制作会社。
2024年、映画『死が美しいなんて誰が言った』がアヌシー国際アニメーション映画祭に入選。練馬区にモーションキャプチャースタジオを有し、クライアントの“創りたい”を叶えることをモットーに、実写とアニメーションの境界をなくす制作手法に取り組んでいる。 https://supersub.mocap.co.jp
会場からの質問
アメリカとフランスで活動する女性プロデューサーからの質問:
「この5作品の中でAIを使っている作品はいくつありますか?」
合同会社ズーパーズースのAIロトスコープは作画にAI使用していますが、他の作品はAIは使っていません。
なお質問の意図としては「ほとんどの作品が企画の段階でAIを使っているだろう」と思ったそうです。
フランスの教育者からの質問:
「製作体制には日本人だけが参加しているの?」
この質問については各社とも「多様な文化圏が参加している」と回答していました。

10周年を記念したパーティでは「The Taste of Water」による日本酒の振る舞いも。

AIを使った新しい表現、従来のアニメーションの概念を超えたドキュメンタリーといった視点に加え、日本酒の深さを伝える機会となり、大人気でした。

本プロジェクトで採択されたアニメーション企画は開催期間を通して、多くの商談と向き合っています。いずれ世界のステージで有名になる作品も登場するかもしれません。また、生成AIをはじめとして、映像業界が抱える多くの新しい課題、新しい市場、その風向きがこの場所に集結しています。この遠征を通して世界のマーケットを知る経験を得たことは大変貴重なことでしょう。皆さんもこの事業に挑戦してみませんか?

東京都および関係者のご協力への感謝をここに記します。
MIFAアヌシー国際アニメーション映画祭特集はこの後も続きます!
Originally published at note.com/aicu on June 13, 2025.
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